2014 Fiscal Year Research-status Report
産むことと育てることの分離可能性に関するアクションリサーチ
Project/Area Number |
26380690
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Research Institution | Okayama Prefectural University |
Principal Investigator |
樂木 章子 岡山県立大学, 保健福祉学部, 准教授 (00372871)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
杉万 俊夫 京都大学, 人間・環境学研究科(研究院), 教授 (10135642)
八ツ塚 一郎 熊本大学, 教育学部, 准教授 (10289126)
東村 知子 奈良学園大学奈良文化女子短期大学部, その他部局等, 准教授 (30432587)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 産むことと育てること / 養子・里子 / 養親・里親 / 産みの母 / 直結規範・分離規範 / 言説分析 / アクションリサーチ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、(a)養子・養親家庭におけるアクションリサーチと、(b)血縁のない親子関係に関する一般社会の規範変容や啓発に関するアクションリサーチである。(a)においては、思春期以降の子どもを持つ養子縁組家庭を対象に、養子を迎えるに至るプロセスや、養子を迎えた直後から現在の家庭状況に関するライフストーリーを収集した。その際、とくに、①養子・里子を迎える決心をする段階で、夫婦間で交わされた言説、②養子あっせん機関の研修による規範変容に関する言説、および、養子斡旋機関が養子縁組希望者に対して使用する言説戦略、③真実告知(生物学的親子関係でないことを子どもに伝える)の際に子どもに対して用いた言説、④養子縁組家庭であることを学校や近隣に対して伝える際に用いた言説、⑤養親が「産みの親」について言及する際に用いた言説、⑥養子が「産みの親(実父母)」について言及する際に用いた言説に着目した。 (b) においては、次年度以降に向けた準備段階として、教育・福祉系の大学生を対象に、養子縁組や里親制度に関する知識の有無や、子どもを育てられない産みの親・養子となる子ども・養親の三者のイメージに関するアンケート調査を実施した。全体的な傾向として、教育・福祉系の大学生であっても、養子縁組や里親制度についての知識が乏しいことや、養子を取り巻く状況についての情報源がメディアの比重が高いこと、したがって画一的で偏ったイメージしか持たないことが示唆された。次いで、このような大学生が養子縁組当事者と直接的に関わることで、学生の知識やイメージにどのような変化やインパクトをもたらしたかを検討した。さらに、文書化した学生の反応を当事者と共有し、養子縁組を啓発するうえで、いかなるメッセージが必要かを、当事者とともにディスカッションした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(a) 養子・養親家庭におけるアクションリサーチ 養親養子に関するヒアリングは、順調に進行中である。思春期以降の子どもがいる家庭を中心とした調査であるため、事例は少ないものの、養親のみならず養子自身からも話を聞くことができた。 (b) 血縁のない親子関係に関する一般社会の規範変容や啓発に関するアクションリサーチ 一般社会への啓発活動の準備段階として、大学生を対象とした予備的な意識調査が実施できた。調査では、養子縁組当事者との直接的な対話を通じた大学生の規範変容を検討したのみならず、当事者からもフィードバック(伝えたかったメッセージ、伝わらなかったメッセージ)を受け、一般社会への啓発のヒントを得た。 (a)、(b)のアクションリサーチを通して、本研究は、養子縁組当事者と研究者との協同的実践の場として本格的に始動しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も昨年度と同様に、(a)養子と養親とのアクションリサーチ、(b)血縁のない親子関係に関する一般社会の規範変容や啓発に関するアクションリサーチを継続しつつ、新たに次の課題に取り組む。 (a)養子と養親とのアクションリサーチにおいては、思春期以降の子どもを持つ対象家庭についての定期的・継続的な追跡調査を行う。思春期・青年期は、思春期特有の第二次成長期であり、また、進学や就職などの進路の問題など、子どもとともに家庭状況が著しく変化が想定されるからである。また、養子・養親家庭の事例を追加する予定であるが、その際、異なる養子斡旋機関から養子を迎えた家庭を対象に行う。さらに、里子・里親関係についてのアクションリサーチを本格化させ、養育のみを目的とした里親家庭で用いられる言説を収集し、養子縁組家庭との違いを検討する。これ以外にも、養子・養親家庭や里子・里親家庭当事者の言説を幅広く収集するために、書籍や研究書なども分析に加える。 (b)血縁のない親子関係に関する一般社会の規範変容や啓発に関するアクションリサーチにおいては、昨年度に引き続き、当事者とともに、より効果的な大学生の規範変容や啓発活動に取り組む。また、これまでに行われてきたような「知られざる養子・里子の実態を世間にアピールする」スタイルを見直し、従来型の啓発の脱構築を検討する。
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Causes of Carryover |
・昨年度末に予定されていたフィールド調査の一部が、今年度に変更されたため。 ・共同研究者に緊急の公務が生じ、共同研究者全員との打ち合わせの日程調整が予定回数を下回ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
・昨年度予定分と合わせた、共同研究者全員との打ち合わせ日程を確保する。
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Research Products
(1 results)