2014 Fiscal Year Research-status Report
弱い紐帯の強みを活かした社会的孤立を減らす取り組みに関する実証研究
Project/Area Number |
26380695
|
Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
川口 一美 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (00352675)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 社会的孤立 / 孤立死・孤独死 / 高齢者 / 関係性 / 弱い紐帯 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在日本では、孤独死や虐待の発見の遅れ、引きこもり、生活苦の果ての自殺など孤立が根底にある問題が増加傾向にある。中でも、近年、少子高齢化が進み、おのおの個人や社会の価値観の変化、多様性によって、人口のバランスは崩れ、生活スタイル、個と社会の関係が変化してきた。 今後平成40年頃には、高齢者人口はピークを迎え、その後も人口自体や子供の数は減っていくが、高齢者のみが増え続ける。心身共に家族や友人、社会と関係の築けていない高齢者はますます増加していくことは予想できることだ。 とりわけ、全国的に見ても、本研究の調査地(2地域)でも、社会や家族等と関係を持たない、孤立をした人は、様々なリスクが高まる。社会的に孤立するほど、心身共に悪影響が深刻化することがわかった。その際、注目すべきは、以前の日本であれば同居する家族がいれば、関係性があると考えられていたが、注目すべきは、孤立に影響する関係性は、(同居)家族の有無ではなかった。家族にかかわらず、地域住民や友人、知人、福祉専門職などの関わりがあれば、孤立は防げることがわかった。 よって、今回の調査地の人間関係づくり(引きこもり、関わりのない住民が関わりを持てるような機会)を提案し、関わりのない人(最初はたとえ月1回のきっかけであろうと)への関わり(ネットワーク)構築の一歩を築いた。 また、地域内での眠っている社会資源として(退職した)高齢者に注目し、その地域に関するネットワークの要となる人の意義をまとめ、対象者へ投げかけた。そこで、地域の要となる必要性、また、自身がそのネットワークをつくり、(活用する側のみでなく)支えていく意識を高めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、①全国的な社会的孤立の傾向の分析を行うこと、②調査対象地との関係づくりをすることが主な研究内容だった。 ①について:全国的な社会的孤立の状況については、文献データ等から確認し、やはり高齢化が進むエリアでは社会的孤立の問題は避けて通れないことがわかった。また、社会的孤立は、高齢者に限った問題ではなく幅広い年代層に見て取れる。 ②について:調査対象地とは、定期的な交流をし、信頼関係を構築している。その中で研究(調査)に関して繰り返し打ち合わせ、会議を行い関係性、研究の内容に関する理解、必要性も伝わっており、良好な関係が築けている。現在、対象地で現在抱えている問題(孤立関係の情報収集より)も明らかになってきた。よって、地域住民全体の中で活用できる社会資源の有無や実際の引きこもり等で社会的孤立状況にある人の把握をするため、対象地と合同で調査を計画し、実施している。 今年度の計画では、①の全国的な現状を文献から把握すること、②の対象地との関係を築くことを掲げて取り組んできたが、対象地のニーズの高まりと対象地からの依頼によって、次年度実施する予定の調査を今年度に早めて実施した。(アンケートの回収まで終了している。)これについては、対象地の意向をかなり加え、対象地住民の合意、納得を得て進められたため、調査を行う上での契約と合意、倫理的配慮等は問題ないものを考えられる。ただ、計画を早めたため、多少文献調査の内容や範囲が少なくなっているが、この点については今後動向を追うことで調整したい。 上記理由から平成26年度の研究達成状況として、概ね順調に進展していると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の本研究の進め方としては、調査対象地と関わる時間を増やし、実際のフィールドを見て研究を進めていく。平成27年度に行う予定であった量的調査については、調査票の回収まで終了しているため、分析を丁寧に行っていく。また、調査対象地での質的調査を実施し、平成28年度の分析に向けた、データ蓄積や社会資源の洗い出しを行う。 特に量的調査での結果(社会背景の特徴、他者との関係性、近隣関係、健康状況、ニーズ)で大まかに捉えた特徴を元に、実際のフィールド内で具体的な事象・事例、対象者についてどのような状況なのかを捉えていく。(フィールドワーク(インタビュー、参与観察)を実施) 量的調査の結果は、平成27年度中に調査対象地に還元し、地域での啓発に活用する。(地域の住民だより・住民新聞等への掲載)また、フィールドワークで得られた問題・課題と地域に眠っている社会資源を可視化し、どの位の問題があるのか(いつ、どこに、だれ、何、どれくらいなど)を傾向、シチュエーション毎に分類し、ニーズを抽出する。また使えるものがどれくらいあるのか(いつ、どこに、だれ、何、どれくらいなど)を具体的に示し、使用可能な社会資源(ひと、もの、時間、行為など)を明らかにしていく。 上記の内容(質的調査:フィールドワーク)については、インタビュー後の逐語記録や、参与観察でのフィールドノートが重要なため、早い時期にそのフォーマット等を決定する必要がある。くわえて、フィールドでの調査のため、個々への説明(契約と合意)を丁寧に行い、文書、口頭など様々な形で、かつ繰り返し、説明し、フィードバックも含め行っていく予定だ。
|