2016 Fiscal Year Research-status Report
弱い紐帯の強みを活かした社会的孤立を減らす取り組みに関する実証研究
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26380695
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Research Institution | Seitoku University |
Principal Investigator |
川口 一美 聖徳大学, 心理・福祉学部, 准教授 (00352675)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 弱い紐帯 / 社会関係資本 / ソーシャルキャピタル / 孤立死・孤独死 / 孤独 / 団地 / 社会問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は4年間の本研究計画のうちの3年目である。平成27年度に行った量的調査(アンケート)から本人の属性、家族、地域との係性などからほしいと考えるもしくは必要だと考える支援や関係が浮き彫りになった。 それを受け、平成28年度では、実際に人々がどんなことをどんな人に頼みたいか。どんな人とつながる(つながることが可能な)関係性、社会資源があるのかを実際の地域での聞き取り、意見交換会、地域拠点(自治会や地域の相談できるセンターなど)にて、聞き取り、観察などの質的調査を行った。 その結果、外に出て、家族や地域等の友人と交流がある場合は、本人の希望する生活をしていることが分かった。その秘訣として、他者と(家族や地域の友人)とも(直接)接触する機会を自ら設け、孤立しない(抱え込まない)状況を意識的に作っていることが分かった。電話やメールをはじめ、直接の接触のほか、サークル活動など様々な方法でアクションを起こしており、定期的に(計画的に)他者と接触していた。そのやり取り自体が自分にも他者にも弱い紐帯となり、お互いに利益をもたらしていた。 自分が外に出ることが、自分にも他者にも役立ち、それでいて絶対的な強制ではないギブアンドテイクの関係がそこにはあった。また、日々の生活の中で、ちょっとした「こんなことがあったら」と思うことも浮き彫りとなったため、それを地域にある社会資源と結び付けの選定をした。例えば、身体的にも金銭的にも問題を抱え、病院等にも行きたくても行けなかったり、孤立状態にある人と自分の持っている能力を他者に活用したいと思っている人のマッチング、また団地の上の階からの資源回収等の排出が大変という声に地域ボランティアや販売店とマッチングするなど、これについては、平成29年度に実際に運用し、実現可能なものか、また多くの人の弱い紐帯での実現可能なものなのかを確認していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の計画では、平成27年度に行ったアンケートの結果について、より具体的に質的調査で団地住民に聞き取り、観察をし、人々の現状、地域にある社会資源を把握すること、加えてそれに活用(対応)できそうな、地域にある社会資源を抽出し、それらをマッチングすることを目的としていた。 実際にアンケートの結果をもとに、個々の対象にニーズの内容(どれくらいどのように困っているか)や社会資源提供側の「社会資源としてどれくらい何を提供できるか」などの話を聞くと、同じ悩みを抱えていても、それと結び付ける社会資源が同じで良いとは限らず、どの問題と、複数ある社会資源から、どの資源を結び付けるのが効果的なのか、また、実現可能なものなのかを聞き取りや観察から見極めた。 上記の結果から調査フィールドにおける、ニーズと社会資源が明らかになった。加えて、地域内でのニーズと社会資源のマッチングの候補のめどがいくつか立った。おそらく今後も情報収集を続けることで、マッチングできるものは増えると考えられるが、次年度の実証のための候補は選定できたといえる。加えて、今後も定期的にニーズを吸い上げるような場(座談会など)を設けることが可能となったので、ニーズ把握、情報収集の面でも今後も随時のサイクルが確立できたと考える。(この方法がニーズを把握する唯一の方法ではないが、一つの側面として、効果的であると考える。) また次年度に向けての調査フィールドでのニーズを持った対象者と社会資源を提供する側への説明等も計画通り進めており、調査フィールドでの理解と協力は、今後も得られる。次年度の実証に向け、具体的な方法等については、今後も説明をし、調査や実際の運用がスムーズに進むよう努める。上記の理由から平成28年度計画の実施、推進状況は、ほぼ計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度は、この研究の最終年度となる。今年度は、2つのことが本研究の目的となる。一つ目は、平成29年度の調査計画の実施である。前年度に調査フィールドの地域内でマッチングしたニーズと社会資源を連動させ、それがこの1年間でどのような結果をもたらすかを把握する。二つ目は、本研究の最終的な結果をまとめることである。この4年間の研究の中で行ってきたことが、実際の調査フィールドにある問題や課題を軽減できたかどうか、また地域に眠る社会資源を可視化することができたのかなどを見極める必要がある。また、このマッチングについて今後の運用ができるのかどうか(地域内の人々の間で)を判断することも課題である。 実際の調査フィールドでマッチングしたことがきちんと運用できるのか定期的に面接、観察をして、実際の状況を記録し、判断材料としたい。ただし、1年間で結果がすぐ出るような問題ではない部分もあるため、経過や状況の変化の把握が最終的な判断材料になることもあるかと思うが、実施前とその時の状況で、(良い方向に)変化があるのかどうかで判断したい。 また、実際に生活している団地内での(生活内における)実証のため、マッチングしたことが滞ることも想定される。その場合、類似のマッチングが可能なら、再度マッチングし継続する。もしマッチングができなければ、その時点での評価とする。年度内で新たなマッチング、実施が可能なものを見出した場合はその時期、内容等によって、随時判断したい。ただ、地域にできるだけ繋がりが増えるよう、取り組む方向で考え、実施する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由として、計画立案時に立てていた物品購入計画の品よりも、わずかではあるが、安価で、かつより良いものが発売されたため、そちらの購入に切り替えたことによる。 よって、273円の繰り越しが生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に、フィールドに出る機会が計画時よりも増えることも予想されるので、(契約と合意の説明に複数回時間を要したり、調査対象者都合のやりとりが増えるため、そこでの利用(連絡調整等)に補充したい。
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