2014 Fiscal Year Research-status Report
グローバリゼーションと国際労働移動:バングラデシュ女性労働者の実態調査
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26380709
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
鈴木 弥生 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (80289751)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バングラデシュ / グローバリゼーション / 国際労働移動 / 海外出稼ぎ労働 / 貧困 / アメリカ合衆国 / ニューヨーク / ダイバシティ・ビザ |
Outline of Annual Research Achievements |
我々が1999年より科学研究費の助成によって研究・調査を継続しているバングラデシュでは、特に首都ダカとその周辺、クミッラ県広域他において外国援助による開発が推進されてきた。にもかかわらず、2010年現在でも国民の約3割が絶対的貧困の状態におかれている。また、貧困層をはじめとする人々の雇用機会や賃金は低水準のままである。こうした背景から、バングラデシュでは、家族構成員への送金を目的として海外出稼ぎ労働に就く人々が急増している。2011年度の海外出稼ぎ労働者数は513万512人(Ministry of Expatriates' Welfare and Overseas Employmentによる)であるが、移動先をみると、その約8割がGCC(Gulf Cooperation Coucil:湾岸諸国会議)諸国となっている。 今回の研究では、バングラデシュからUSA(United States of America:アメリカ合衆国)への移動・移住者が増加傾向にあることが分かった。これに伴いUSAからバングラデシュへの送金額は増大している。2012年のDV(Diversity Visa)応募者は、バングラデシュだけで766万人以上に急増した。しかし、実際のDV取得者は限定されている。DVによってバングラデシュからUSAに移動・移住した人々の多くはニューヨークに滞在している。そこで、ニューヨークでの先行研究・資料収集のほか、バングラデシュ出身者35人から聞取り調査を行った。DVによって移動・移住した人々は、全員がHSC(High School Certificate:高等教育修了証)を修得している。中には、祖国での学士や修士号修得者もみられた。調査の範囲内ではあるが、彼女・彼らの職種は、フランチャイズ店店員、路上販売員、ビラ配布、レストランのウェイターや雑用等に限定されていた。移動・移住の理由は、家族構成員への送金、祖国より発展の機会があると考えていた等が主であった。中には、DVを取得した女性が、後永住権獲得後に家族構成員全員を現地に呼び寄せているといった事例もみられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、グローバリゼーションの進展に伴う国際労働移動に焦点をあて、主としてバングラデシュ出身の女性労働者の実態を明らかにすることを目的としている。具体的には、バングラデシュ出身者が増加傾向にあるUSAでの労働実態、移動の背景、職種や賃金、家族構成員への影響、各国における制度や施策を明らかにすることを目的とする。また、USAにおけるバングラデシュ出身者以外の移動労働者の実態や各出身国・地域での実態調査を通して、バングラデシュ出身者がUSAの社会構造の中でどのように位置づけられているのかを分析する。さらに、バングラデシュ出身者が出稼ぎ労働を目的として移動・移住しているUSA以外の各国・地域においても実態調査を行う。そのうえで、女性の国際労働移動が貧困や社会問題解決に結びついているのか否かを明らかにすることを目的とする。 本研究助成の初年度にあたる2014年度は、USAに滞在して、先行研究と資料の収集及びバングラデシュ出身者の労働実態、移動の背景、職種や賃金、家族構成員への影響等について実態調査を行った。その他、バングラデシュ出身者が多く滞在するブルネイにおいて聞き取り調査を行った。 以上により、交付申請書の「研究の目的」達成度については、おおむね順調に進展していると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度同様、USAにおいて先行研究と資料の収集及びバングラデシュ出身者からの聞き取り調査を行う。また、交付申請書でも述べたように、「国際労働移動は二国間の孤立した現象ではなく、グローバルな労働の流れの一環として位置づけられる」(森田桐郎編著『国際労働移動と外国人労働者』同文館、1994年、25頁)という指摘から、USAにおけるバングラデシュ出身者以外の移動労働者の実態のほか、USAへの移動・移住者が多くみられる各出身国・地域においても資料収集や実態調査を行う。さらに、可能であれば、バングラデシュ出身者が労働を目的として移動しているUSA以外の国・地域においても資料収集と実態調査を行う。また、移動労働者の多くは、男性が移動・移住した国・地域に女性も移動・移住するといった傾向がみられることから、男性からの聞き取り調査も継続する。 各国・地域での治安悪化が懸念される場合には、適宜調査日程等を変更する。 これまでの研究成果については、適宜学会誌に投稿する。
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