2015 Fiscal Year Research-status Report
グローバリゼーションと国際労働移動:バングラデシュ女性労働者の実態調査
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26380709
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
鈴木 弥生 立教大学, コミュニティ福祉学部, 教授 (80289751)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | バングラデシュ / グローバリゼーション / 国際労働移動 / 海外出稼ぎ労働 / 貧困 / アメリカ合衆国 / ニューヨーク / ダイバシティ・ビザ |
Outline of Annual Research Achievements |
バングラデシュでは、広範囲に及んで外国主導による援助・開発が推進されてきたが、2010年現在でも国民の約3割が絶対的貧困の状態にあり、国内の雇用機会や賃金は依然として低水準のままである。こうした背景から、海外出稼ぎ労働に就く人々が急増している。移動先をみると、その約8割がGCC諸国であるが、高額な斡旋料、低賃金・長時間労働といった問題が顕著である。その一方、USAへの移住(もしくは移動)、また、それを希望する人々が増加傾向にある。Yearbook of Immigration Statistics 2012によれば、2012年にUSAの永住権を獲得した外国人の数は103万1631人である。その中で約4割がアジア出身者であり、そのうち、1万4705人がバングラデシュ出身者である。これらバングラデシュ出身者の約半数はニューヨークに居住している(居住予定者を含む)。 そこで、2015年には、ニューヨークに居住するバングラデシュ出身者から聞取り調査を行っている。彼女・彼らの移住(移動)の目的は、より良い生活を求めてというものが主であった。ダイバシティ・ビザ・プログラムによって移住している人々は、ダカの斡旋業者を介在させているため、多額の費用を支出している。そのほか、先に移住していた家族や親戚が保証人となって永住権を獲得している。ここでは、家族や親戚を通して居住先や雇用機会を確保しており、相互扶助関係がみられる。また、UAEでの調査と比較すると、ニューヨークでは、法的に最低賃金は保証されているものの、高騰する家賃をはじめとする支出に伴い、長時間労働を余儀なくされている。そのため、「体調不良、狭い住環境、食料等の高騰、家族構成員と過ごす時間の減少、限定された職業選択肢、家事労働の負担増」のほか、「米文化への抵抗感、祖国出身者以外の友人を持つことが困難」といった回答(現状)がみられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、グローバリゼーションの進展に伴う国際労働移動に焦点をあて、主としてバングラデシュ出身の女性労働者の実態を明らかにすることを目的としている。具体的には、バングラデシュ出身者が増加傾向にあるUSAでの労働実態、移住(もしくは移動)の背景、職種や賃金、家族構成員への影響、各国における制度や施策を明らかにする。また、USAにおけるバングラデシュ出身者以外の移動労働者の実態や各出身国・地域での実態調査を通して、バングラデシュ出身者がUSAの社会構造の中でどのように位置づけられているのかを分析する。そのうえで、女性の国際労働移動が貧困や社会問題解決と結びついているのか否かを明らかにすることを目的とする。 本研究助成の2年目にあたる2015年度は、USAに滞在して、バングラデシュ出身者の労働実態、移住(移動)の背景、職種や賃金、家族構成員への影響等について実態調査を行った。 以上により、交付申請書の「研究の目的」達成度については、おおむね順調に進展していると判断することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度同様、USAにおいて先行研究と資料の収集及びバングラデシュ出身者からの聞取り調査を行う。また、交付申請書でも述べたように、「国際労働移動は二国間の孤立した現象ではなく、グローバルな労働の流れの一環として位置づけられる」(森田桐郎編著『国際労働移動と外国人労働者』同文舘、1994年、25頁)という指摘から、USAにおけるバングラデシュ出身者以外の移動労働者の実態調査のほか、USAへの移住・移動者が多くみられる各出身国・地域においても資料収集と実態調査を行う。また、バングラデシュ出身の移動労働者の多くは、男性が移動・移住した国・地域に女性も移動・移住するといった傾向がみられることから、男性からの聞取り調査も継続する。これまでの研究成果については、適宜学会誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
当初予定していた調査日程を縮小させたことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査に伴い必要となる宿泊費及び日当に使用予定。
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Research Products
(1 results)