2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380711
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
浅岡 隆裕 立正大学, 文学部, 准教授 (10350290)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田端 章明 立正大学, 人文科学研究所, 研究員 (60727840)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ノスタルジア / 昭和30年代 / メディア表象 / 集合的記憶 / 社会意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は,昭和および昭和30年代に焦点を当てた常設展示,催事を見学した。その際には,どういった展示物があるのかといった事実の確認だけではなく,来場者とそのインタラクション(同行者とのやり取り)や見学態度などについても観察した。こうした見学および現地での資料収集をした施設は,常設展示が3件,期間限定の催事などの企画展示やイベントが8件であった。見学や情報収集が中心で,それらの素材(一次資料)の詳細な分析はこれから進めていくところである。 地域で展開されている催事の場合には,昭和という時代背景が紹介されつつ,地域固有の出来事や生活様式についての展示・解説もかなり大きな位置を占めており,その事実を深く掘り下げるものもあった。来場者は,親子あるいは祖父母+親+こどもといった組み合わせが多く,祖父母や親からの解説を熱心に聞き入っているこども世代の姿が多くみられた。世代間での情報伝達の場であったと言える。昭和年代(とくに30年代)の日本全国を通して普遍的に見られたナショナルなレベルでの全体像を公的な歴史像として提示し,そのうえで,地域固有の(自分たちにとっては了解可能な)私的な懐かしさという領域が公的な歴史表象によって補われていくといった構図が鮮明に見られた。 昭和および昭和30年代の表象という点では,東京オリンピック関連に関連したものが多数見られた。平成26年が昭和39年(1964年)の東京オリンピックから50年目という節目を迎えたこと,また2020年の東京オリンピックを控えて盛り上げることを目的としたような意図があったと思われる。27年は,「戦後70」年という区切りの中で,昭和を総括することを狙った表象が年初から多数見られる。生活者の側でもこうした回顧的なイベントや表象を概ね歓迎しており,これらをもとに,自身の昭和体験の記憶やイメージを再編成・構築していることが想定される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度に収集した資料・データの分析が進行中である。同時に進める予定であった先行研究のレビュー・検討を通じての研究フレーム作りがはかばかしくない。さらには,今後計画している社会調査(インタビュー,アンケート調査)に関わる調査スキームの構築が進捗していない。 交付申請書で挙げた「生活者側での受容」についての実証研究は,これまで先行研究が少ないだけに,とくに苦労している点である。隣接研究領域などの先行研究も視野に入れてレビューを進め,研究フレーム,調査スキームを彫琢することに注力したい。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したように研究フレームや調査スキームの構築には時間がかかることが予想されるために,27年度も継続的にその作業を進めつつ,当初計画通り,研究期間を通して2パターンの社会調査の企画も進行させていく。 具体的に言えば,平成27年度中には定性的なデータの収集であり,インタビュー調査を実施する。調査対象は,ノスタルジア志向を強く示している個人と同一年代で構成されるグループである。これらのインタビュー調査を通じて得られた発言データの分析からさらなる作業仮説を導き出し,平成28年度のインターネット上でのパネルを活用した統計調査において,検証を試みる。
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Causes of Carryover |
翌年度以降に予定されている実査費用が予想外に掛かることが予見されたために,初年度に支出すべき金額をやや絞り込んだことが主な要因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
27年度計上費用では実査に充てる金額を確保するために,研究フレームや調査スキーム構築に必要な書籍・資料等については十分な予算が確保できないと思われる。そこで,26年度の繰越金の全額をこれらの購入費用に充てることとする。
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