2014 Fiscal Year Research-status Report
近代の都市形成と軍用地-戦争アーカイヴ活用による歴史社会学的研究
Project/Area Number |
26380713
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
武田 尚子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (30339527)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 渋谷 / 軍用地 / 道玄坂 / 富士講 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、近代東京の軍用地研究として「都心地域:渋谷・代々木・世田谷」を分析対象に戦前期の土地所有状況を調査し、軍用地化する以前の地域社会構造を明らかにした。具体的には、渋谷道玄坂の変容と地付層の関連を明らかにし、軍用地建設までの経過を解明した。東京西南部は、おおよそ次のような変容プロセスをたどった。 明治期から大正期にかけて、東京市西南部の郊外地域の土地利用は変化し、人口が流入し、都市化が進展した。これにともない、渋谷道玄坂周辺には遊興・消費空間が形成されていった。 渋谷道玄坂の変容を探る一つの方法として、近世以来の道玄坂の居住者であった吉田平左衛門家に着目し、吉田家に関する歴史的資料に基づいて、地域社会における吉田家の社会的位置づけの変遷を考察した。吉田家は江戸期から道玄坂沿道に居住しており、富士講の講元としても著名であった。また、明治後半には渋谷村村会議員を務め、地域社会で一定の社会的威信を有していた家である。渋谷道玄坂周辺は、近世は江戸近郊の農村であったが、明治になると商品作物の流入が増加し、商取引も活発に行われるようになった。産業化・都市化に即して、流入者が増加し、吉田家のような地付層が地域社会で占める位置は変化していった。このような歴史的蓄積がある町村が、近代に同一の行政区分に入ることによって、どのように共同問題に対処すべきか、新たな連帯のしくみを作る課題に直面することになった。つまり、幕政期の旧慣そのままではなく、近代の地域社会の慣行を作り出すことが必要になった。吉田平左衛門家を通して、道玄坂の変化を通時的にたどることによって、道玄坂にこのような空間的特徴があることが明らかになり、道玄坂独自の地域特性の一端が解明された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績の内容に基づいて、「渋谷道玄坂の変容と地付層-富士講講元・吉田平左衛門家の近世・近代」という論文を執筆し、生活文化史学会の査読論文として通過し、現在印刷中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
【Ⅱ.国際比較研究:近代ロンドンの軍用地と軍需工場】では、イギリス国立公文書館に所蔵されているウリッジ海軍工廠の資料閲覧、複写作業、データベース化を行う作業について、精力的に行う予定で、日本国内研究と比較可能にする予定である。
|