2015 Fiscal Year Research-status Report
現代韓国社会における「死の医療化」―医療化と脱医療化の相克―
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26380717
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
株本 千鶴 椙山女学園大学, 人間関係学部, 教授 (50315735)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 死の医療化 / 尊厳死 / 終末期医療 / 韓国 / 国際情報交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
①医療化と「死の医療化」に関する先行研究の収集と検討:昨年度に引き続き、国内外の医療社会学を中心とした理論研究および実証研究の文献を収集し、内容を検討した。韓国における研究状況については、社会学を中心に死に関する先行研究を収集し、内容を検討した。また、日本国内では関連の学会(福祉社会学会、日本緩和医療学会、日本社会学会)に参加し、関連研究の動向の把握に努めた。 ②ホスピス緩和医療診療報酬制度に関する資料の収集と検討:2015年7月に実施されたホスピス緩和医療の診療報酬制度に関する法制関連資料、運営関連資料、関連文献の収集を行い、内容を検討した。 ③「ホスピス・緩和医療及び臨終過程にある患者の延命医療決定に関する法律」に関する資料の収集と検討:2016年1月に成立した延命医療の決定について定めた法律(別名「ウェル・ダイング法」)に関する法制関連資料、公聴会や討論会の資料、関連文献の収集を行い、内容を検討した。 ④ホスピス及び老人療養病院関係者に対するヒアリング調査:ホスピス・緩和医療に対する診療報酬の適用や延命医療に関する法律の制定など、「死の医療化」に影響を与える新たな社会的変容が起きたため、それらについてホスピスと療養病院で臨床に当たる医師に現状や問題点、今後の展望などについてヒアリング調査を実施した。 ⑤次年度のヒアリング準備:本年度収集した資料やヒアリング調査の結果をもとに、次年度のヒアリング調査対象候補を検討し、また、調査依頼について関係者への協力要請を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①医療化と「死の医療化」に関する先行研究の収集と検討についてはほぼ達成できたが、韓国の療養病院に関する資料収集が若干不十分な状況である。②ホスピス緩和医療診療報酬制度に関する資料の収集と検討、③「ホスピス・緩和医療及び臨終過程にある患者の延命医療決定に関する法律」に関する資料の収集と検討については、制度や法制化が急展開で進んだため、当初の計画では、本年度はヒアリング調査を実施する予定であったが、それ以前にこれら制度や法律を熟知する必要性が生じた。そのため、関連資料の収集を優先させ、これらに関して、④ホスピス及び老人療養病院関係者に対するヒアリング調査を実施する、という研究の進め方に切り替えた。結果として、資料収集と法制化についてのヒアリング調査を進めながら、それらの結果を基に、⑤次年度のヒアリング準備として調査対象候補を検討し、調査依頼について関係者への協力要請を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
①ヒアリング調査の実施:尊厳死法制化と老人療養病院の関係者に対するヒアリング調査を実施する。尊厳死については、「ホスピス・緩和医療及び臨終過程にある患者の延命医療決定に関する法律」の法制化について詳しい関係者を対象とする。老人療養病院については、実務関係者を対象とする。法や制度の施行による現状の変容について尋ねることを含め、臨床現場での医療化と脱医療化、あるいはキュア(医学)とケアのあり方についての現状や展望についてヒアリングを試みる予定である。 ②文献補足調査:ヒアリング調査の結果、収集の必要が生じた文献、資料を収集する。また、本年度収集した資料と同種の資料を対象に補足的な文献調査も行う。 ③学会参加による関連研究の最新動向の把握:日本緩和医療学会学術大会、日本死の臨床研究会、仏教看護・ビハーラ学会、福祉社会学会等の学会に参加し、関連研究の最新動向を把握する。
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