2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380718
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
阿部 利洋 大谷大学, 文学部, 准教授 (90410969)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 移行期正義 / 移民 / 社会運動 / クメール・ルージュ特別法廷 |
Outline of Annual Research Achievements |
体制転換あるいは紛争終結により民主化した社会は、包括的な社会秩序の再建に取り組むことになる。その際に実施されるさまざまな制度・活動は移行期正義と総称され、これまでアジア・アフリカ各地で行われてきた。本研究は、そのような移行期正義の事例評価を、政策として掲げられる際の公式目標ではなく、社会的影響の観点から比較検討することを目的としている。 平成26年度の計画は、真実和解委員会活動後の南アフリカにおける社会統合のあり様を批判的に把握することと、カンボジアにおけるクメール・ルージュ特別法廷に対する社会的反応を国内NGOによる活動の補てんという観点から考察することであった。 これらに対し、イギリスでの資料収集・関連研究者との意見交換、およびカンボジアにおける聞き取り調査を実施した。南アフリカに関する課題は、近年の移民政策と移民ネットワークというテーマで、南アフリカ人研究者との共著論文を執筆し、関連媒体に投稿した。また、カンボジアでは、ローカル・メディアにおける特別法廷報道の傾向をフォローしつつ、活動の長期化を受けて展開するNGOの被害者支援の現状を把握し、そうした現在進行形のデータを取り入れた論文を執筆した。これについては、複数の関連研究者による英文論文集という形ですでに出版社へ提出している。南アフリカとカンボジアそれぞれに対するケース・スタディを以上のように行う一方で、移行期正義の理論的課題――つねに失敗していると評価されてきている――に着目した論文を執筆し、本研究における理論的方向性を明確化した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
南アフリカにおけるよりインテンシブな調査が必要であるが、論文執筆等の成果発表に関しては、査読中のものも含め、当初の予定よりも順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究におけるこれまでのケース・スタディを比較検討するための、フィールドデータの収集をより展開させる必要がある。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は現在の残額であり、ほぼ予定どおり使用できたと考えている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
文具その他の消耗品費として計上する予定である。
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