2015 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ型多文化主義の成立と展開をめぐる歴史社会学的研究
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26380720
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
南川 文里 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (60398427)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 多文化主義 / 多文化教育 / エスニシティ / 人種 / 人種主義 / アファーマティブ・アクション / 多文化共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、アメリカ型多文化主義をめぐる理論的枠組の整理と、実証研究のための資料収集と分析を主に行った。理論的枠組の整理については、アメリカ合衆国における多元的統合の理念としての「多からなる一(e pluribus unum)」の具現化をめぐる編入様式の1つとしてアメリカ型多文化主義を位置づけ、その理論的・歴史的課題と、その修正型としての「包摂型多文化主義(inclusive multiculturalism)」の構想について、ポストエスニシティ論に対する対比やバラク・オバマの人種論などを背景に整理し、提案した。上記の内容は、単著書『アメリカ多文化社会論:「多からなる一」の系譜と現在』(法律文化社、2016年2月)として発表された。一方、実証研究としては、アメリカ型多文化主義における人種エスニック分類の公式化の過程を1970年代における連邦行政管理予算局(OMB)における命令15号をめぐる議論について、米国国立公文書館においてリサーチを行った。また、1990年代における多文化教育の導入過程について、ニューヨーク州の社会科教育プログラムの多文化カリキュラム開発をめぐる議論について、ニューヨーク州立公文書館および教育局で調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アメリカ型多文化主義の具体的な導入と変容過程については、1970年代および80年代についての資料収集は順調に行われ、その分析成果を28年度に発表することができる見込みである。ただし、成果発表については、28年度に世界社会学会(International Sociological Association)の世界社会学会議において報告する予定であったが、残念ながらパネルの採択を受けられず、28年度中に報告予定を確定する見込みである。一方、計画以上に進展したのは、理論的研究についてで、アメリカ型多文化主義をめぐる理論的状況を整理した単著書『アメリカ多文化社会論:「多からなる一」の系譜と現在』として出版することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度の課題は、1970年代および1980年代のアメリカ型多文化主義の導入と変容の過程である。具体的に扱うトピックは以下の2点である。 (1)1970年代におけるアメリカ合衆国における人種エスニックなカテゴリーの「公式化」とアファーマティブ・アクションの導入過程について、連邦行政管理予算局(OMB)および教育省における政策形成過程を分析し、5つの人種エスニックなカテゴリーへと結晶化する過程を分析する。 (2)1980年代における多文化教育カリキュラム形成過程について、ニューヨーク州教育局のトマス・ソボル局長の思想と研究者との意見交換過程に注目しながら、多文化教育というかたちでアメリカ型多文化主義が、肯定的にも否定的にも一般に拡大する過程を分析する。また、カリフォルニア州などでの同時代の取り組みについても調査する。 (1)については、年度内の研究報告を目的に、(2)については次年度の成果発表を前提に、資料収集と分析を中心に進める。
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