2015 Fiscal Year Research-status Report
家事労働における感情と意識の構築過程-高度経済成長期を生きた女性の証言分析
Project/Area Number |
26380722
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Research Institution | Kyoto Kacho University |
Principal Investigator |
斧出 節子 京都華頂大学, その他部局等, 教授 (80269745)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯浅 俊郎 京都華頂大学, その他部局等, 准教授 (20632350)
新矢 昌昭 華頂短期大学, その他部局等, 准教授 (70625699)
馬場 まみ 京都華頂大学, その他部局等, 教授 (80218677)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 主婦化 / 高度経済成長期 / 女性労働者 / 創造的家事 / 都市生活 |
Outline of Annual Research Achievements |
高度経済成長期以前の家族の役割構造と、高度経済成長期を経て、性別役割分業化が進んでいった過程を明らかにすることが本研究の目的である。本年度は具体的には三つの課題を設定した。 1.インタビュー調査票の作成とインタビュー調査の実施:女性の家事労働の実態および家事に従事する女性の意識を明らかにするための調査票を作成した。調査項目について議論を重ねるなかで、問題意識を共有し明らかにすべき課題を明確化することができた。インタビュー調査は、11名を対象に行った。対象者は、60歳代後半から70歳代の女性である。高度経済成長期において、自営業者、自営業者の妻、雇用者の妻など、様々な立場にあった女性を対象に調査を行った。インタビューでの語りからは、それぞれの子育て期において、仕事と家事を行っていた状況は多様であり、生活状況によって家事に対する取り組み方や意識に違いがあることが明らかになった。詳細な分析は次年度以降に行う予定である。 2.京都の伝統産業と女性労働の変遷に関する資料収集:伝統産業関連の組合にヒアリングを行った。高度経済成長期を中心に、その前後の時代も含めて、京都の繊維産業がどのように展開し、そこで働く女性がどのような仕事に従事し、どのような位置づけであったのかを検討するための資料を収集した。また、京都の伝統産業で働いていた女性労働者を対象にインタビュー調査を行うための基礎資料を得ることができた。 3.高度経済成長期の社会と家事労働に関する資料収集と分析:高度経済成長期の社会の変化、家事労働の変化に関する資料を収集し、産業化の進展に伴って女性が担う家事の内容が変化していく過程を分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の課題は、女性・事業者インタビュー調査を実施することであった。本年度は11名の女性に対するインタビューと、1つの同業者団体にヒアリングを行うことができ、おおむね課題を達成することができた。 しかし、当初インタビュー対象者の年齢を70~80歳代と想定していたが、80歳代の対象者を見出すことが困難であった。そのため、インタビュー調査を行った女性の年齢層が60歳代後半~70歳代となった。今後、80歳代の対象者を探すとともに、60歳代の女性に対するインタビュー調査で当初の目的を達成するために、調査票を精査していく必要があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に取り組む課題は、①京都の伝統産業に従事していた女性へのインタビュー調査、②男性へのインタビュー調査である。 京都の伝統産業では自営業者が多いため、女性が家業として生産労働にも従事していたと推測できる。こうした女性に対するインタビュー調査を積み重ねることにより、生産労働と家事労働のあり方、家事に対する意識の変化を把握する。 さらに、男性に対するインタビュー調査を実施し、公的領域と私的領域が区分されてきた過程を分析する。これまでは女性を対象にインタビュー調査を行ってきたため男性を対象として新たに調査票を作成する。男性を対象にインタビュー調査を実施とすることにより、男性の家庭内での役割にあわせて、地域での役割を明らかにしたい。そのことにより、家庭が公的領域から切り離され、女性が私的領域の家事を専ら担うようになった過程がより明確になると考える。
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Causes of Carryover |
1.11件のインタビュー調査を行ったが、すべての調査のテープ起こしを27年度中に行うことができなかったため、テープ起しのための予算を次年度に持ち越すことになった。 2.資料収集のために出張が必要だと想定していたが、27年度に必要な資料に関しては、遠方に出向く必要が生じなかった。そのため、出張費の一部を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、インタビュー調査を継続して実施し、テープ起しの費用を支出する。また、資料収集のため、遠方への出張を予定している。
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