2015 Fiscal Year Research-status Report
在日韓国・朝鮮人一世から二世への生活文化の形成および世代間継承の研究
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26380727
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Research Institution | Osaka University of Economics and Law |
Principal Investigator |
橋本 みゆき 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (60725191)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猿橋 順子 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (10407695)
柳 蓮淑 大阪経済法科大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (20725197)
高 正子 神戸大学, 国際文化学部, 講師 (80441418)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 在日コリアン / 生活文化 / 世代 / 継承 |
Outline of Annual Research Achievements |
助成2年目となる平成27年度は、インタビュー調査とその記録整理が中心であった。主な共同調査地は神奈川県川崎市、韓国済州島、兵庫県姫路市であり、主な対象を在日コリアン2世とし、その家族・親族・知人の人々にもインタビュー協力を得た。また9月に川崎で、3月には東京で検討会議を持ち、共同調査から見えてきたことの確認に加え、個別に実施した調査の報告・共有をおこない、最終年度のまとめ作業に向けて話し合った。 調査活動や研究成果発表により、次のような示唆を得た。(1)「世代」の実際上および分析概念としての複雑さ。世代という概念は一般に、コーホートないし社会イベントによる人々のカテゴリー区分の意味で用いられるが、移民研究では移住何代目という別の用法であるというように、別物として当初捉えていた。しかしインタビューで頻出する「時代」という言葉や時の表現の分析から、両者を統合して理解する視点が浮上してきた。(2)個人の語りとマクロな社会的・文化的背景の関係。複数のインタビュー協力者(の親)の故郷である済州島現地調査を通じて、一見断片的な語りが、時間的・空間的に連続する現象に見えてきた。渡日や食習慣は、個人的経験あるいは家族の過去の語りであるにとどまらず、実は出身地の多くの人が経験していたり、1世の渡日前の家族および日本で形成した家族の生活との間で連綿と続く関係を説明したりすることがある。アウトプットの際にはこの点について改めて考察することになるだろう。 昨年度同様、少ないインタビュー件数ながらも質的に深いインタビューができた。各調査者が日常的に築いてきた人脈やフィールドの資源が有効に生かされ、インタビュー時点だけでなくその後も経過や追加情報を得ている。これは最終年度に研究成果を還元する際の重要な布石になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目と2年目の間で調査計画を若干修正して進めてきたが、当初予定した通り2年目でインタビュー調査をほぼ終えることができた。2年目までに集めてきた事例全体をおおまかに振り返り、フォローアップ・インタビューの必要性の検討を含めて様子を見ながら、アウトプットの段階に本格的に入ったところである。ただし理論的検討はまだ手薄であり、文献・資料収集の余地が残されている。
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Strategy for Future Research Activity |
3年目はアウトプットに力を入れる。 まずは研究者コミュニティに向けて、本研究課題への取り組みから得られた知見や問題提起を、学術論文や学会発表の形で積極的に公表していく。国際的な発信方法や場は未定であるが、これまでに米国および韓国が候補に挙がっている。 もう1つの柱として取り組むのは、インタビュー協力者および一般社会への研究成果の還元である。個々のインタビュー協力者との信頼関係を基盤に、まず個別協力者単位での還元として記録小冊子を作成すること、次に、それに対する反応も盛り込んで頒布版をも作成すること、そして最終的に、それらを集約してある程度まとまった報告書として社会に発信することを目指す。時間と手間がかかる作業であるが、その過程を通じて当事者の生活文化観に双方向から肉薄し、本研究課題の最終的な結論を立体的に導き出すことができればと考える。本研究が、当事者やフィールドにとって結果的にデータ収奪に終わることのないようにしたい。そこで、もう少し時間に余裕をもって丁寧に進めるのが望ましいという案が浮上しており、執行期間の延長を検討している。
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Causes of Carryover |
平成27年度に企画したインタビュー調査の調査地が当初想定していたよりも限定的な地域になったため。またこの3月に実施した済州島調査の旅費支出が一部平成28年度精算となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の分は、研究発表や協力者への成果還元時の費用に振り向ける。具体的には、小冊子・報告書製作のほか、可能ならば、教育場面に活用できる教材作り、地域博物館の展示資料化を模索している。
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Research Products
(14 results)