2014 Fiscal Year Research-status Report
青少年の家庭内暴力に対する民間団体の取組と家族への支援
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26380729
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Research Institution | Naragakuen University |
Principal Investigator |
井上 眞理子 奈良学園大学, ビジネス学部, 教授 (50137171)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 青少年の家庭内暴力 / ファミリー・バイオレンス / 入れ子型エコロジカル理論 / 個体発生的要因 / ミクロシステム / 外システム / マクロシステム / 民間団体による支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、「青少年の家庭内暴力に対する民間団体の取り組みと家族への支援」に関する調査に先行して、青少年による家庭内暴力につぃての説明理論を外国語文献によりながら概観した。これは本研究の理論的枠組である「入れ子型エコロジカル理論(N ested Ecological Theory)」をさらに補充・強化するための作業である。 入れ子型エコロジカル理論は、青少年の家庭内暴力のみならずファミリー・バイオレンス一般を対象としてその発生要因を、*個体発生的要因(Ontogeny 加害者の個人的特性、経験等)、 *ミクロシステム(Microsystem 家族内相互作用のパターン)、*外システム(Exosystem 社会構造的要因)、*マクロシステム(Macrosystem 全体社会の文化、価値規範等)の4つのシステムのいずれかに位置づけ、また要因同士の相互作用を探るものである。平成26年度の外国語文献レビューでは、4つのシステムの各々に関連するものを調査し概観した。個体発生的要因として「境界性パーソナリティ障害」「行為障害」に注目するもの(Laurent and Derry 1999)、「強迫的パーソナリティ障害」に注目するもの(Perera 2006),また発達障害としての「注意欠陥/多動性障害」に注目するもの(Ghanizadeh and Jafari 2010)等がある。ミクロシステム要因として、親による子への暴力あるいは配偶者暴力の被害・目撃経験が肯定的強化、否定的強化、罰のいずれかのレスポンスによって、暴力が子によって学習されるとした「社会的学習理論」(Cottrell and Monk2004 Carlson 2000)および「アタッチメント」に注目した研究がある(Finzi et al 2001)がある。外システム要因として家族の社会的孤立、貧困、学校等に注目する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画調書では、平成26年度の計画として①青少年の家庭内暴力に関する日本語、外国語の文献調査を行う、②相談・支援を行っている民間団体に対して質問紙調査を行うの二つを挙げていたが、実施できたのは①のみにとどまっている。主要な理由は、授業等の大学の仕事が多忙であったこと、他のテーマでの単行本の出版等が重なったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度、28年度において青少年の家庭内暴力に取り組みまた家族の支援を行っている日本国内の65団体に対して質問紙調査を実施する。それらのうち平成20~22年度の科研費によって実施した質問紙調査で回答を得た13団体に対してはインタビュー調査を実施する。対象となる団体は以下のとおりである。*日本整膚心道学園(茨城)、*社団法人家庭問題情報センター(東京)、*心と身体の健康から教育を考えるXing(東京)、不登校情報センター(東京)、*輝け元気!(神奈川)、*リロード(神奈川) *情緒教育研究所(千葉)、*えちご若者元気塾(新潟)、*個性の輝きを見つけよう会(大阪)、*暴力防止情報スペース・APIS(大阪)、*姫路こころの事業団(兵庫) *イーハート(広島)、*メンタルリカバリーセンタービレッジ明石(兵庫)。 比較研究のため、主として欧米で青少年による家庭内暴力に取り組み家族への支援を行っている民間団体に対しての調査を行う。旅費を計上していないのでメール等による対象となる団体は以下のとおりである。*Alternative Restoratives(英国)、*Non-Violent Resistance(英国)、*Respect(英国)、*Sherwood Associates(英国)、*Set Up(米国)、*Family Lives(英国)、*Focus Adolescent Service(米国)、*Parentlink(オーストラリア)、*Qeensland Center for Domestic Family Violence Research(オーストラリア) これらの調査結果を「入れ子型エコロジカル理論」を枠組みとして分析し、その結果を出版する。
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Causes of Carryover |
今年度研究計画においては①青少年による家庭内暴力の日本語・外国語文献調査、②相談支援を行っている民間団体(65団体)に対する質問紙調査の実施を予定していた。しかし授業等の大学の業務が多忙であり、また単行本の出版が重なったため、実施できたのは日本語・外国語文献調査のみで質問紙調査を実施することができなかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度においては、青少年による家庭内暴力に取り組み家族への相談・支援活動を行っている全国の民間団体65団体に対して、活動実態、組織形態、相談内容の概略、相談家族の特徴等に関する質問紙調査を実施する。またこれらの65団体のうち報告者が平成20~22年度の研究で行った質問紙調査において回答を得た13団体に対しては、さらに詳細なインタビュー調査を実施する予定である。したがって次年度使用額についてはこれらの調査を実施・集計・分析するための物品費、旅費、人件費、その他の一部に充当する予定である。
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