2015 Fiscal Year Research-status Report
記憶障害を呈した若年脳損傷者の生活支援、社会支援に関する研究
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26380765
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
先崎 章 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20555057)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浦上 裕子 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 病院 第一診療部, 医長(研究所併任) (00465048)
大賀 優 東京医科大学, 医学部, 講師 (10251159) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 記憶障害 / 高次脳機能障害 / リハビリテーション / 外傷性脳損傷 / 脳動脈瘤破裂 / 長期経過 / 脳炎 / 復職 |
Outline of Annual Research Achievements |
各研究者・研究協力者が所属する4つの施設で、対象層の特徴を活かした記憶障害研究を、施設ごとに分担し行った。 「健康増進施設による支援研究(先崎章)」健康増進施設を一定期間利用している、記憶障害を主症状とする脳損傷者35例を、継続群19例と休止群16例との2群に分けて臨床背景を検討した。継続群では休止群に比較してFAM注意の改善度が有意に大きかった。また今後の研究の方向性を探るために、「記憶障害を呈する軽度外傷性脳損傷の文献的検討」を行った。 「特殊な疾病による記憶障害への支援研究(浦上裕子)」抗NMDA受容体脳炎6名の回復期からのリハと経過を後方視的に検討し、記憶障害の経過を分析した。発症から平均4.5ヵ月でリハを行った4名は平均4ヵ月で認知機能の改善を認め、就労、復学、在宅自立に向かった。一方、発症から治療まで6ヵ月以上経過した2名は、記銘力や展望記憶の障害が回復期以降に残存し、代償手段や就労支援を必要とした。 「小児期発症例に対する支援研究(中島友加、大塚恵美子;研究協力者)」小児期発症の高次脳機能障害者の記憶を含む認知機能の経年的変化について、24例(発症平均9.5歳、調査時平均22.3歳)を検討した。記憶低下が持続すると経年的にVIQ、類似、理解など結晶性知能の低下がみられる一方、PIQや算数など流動的知能は経年的影響が少なかった。また大賀優は「小児頭部外傷における高次脳機能障害について」諸外国の研究状況を調査しまとめた。 「単一疾患における記憶障害の支援研究(青木重陽;研究協力者)」前交通動脈瘤破裂21例の発症後5年間の経過を調査し、三宅式記銘力検査で異常が続いたこと、発症2~5年の経過で障害者評価尺度における心理社会的適応が有意に改善していたこと、綿密な環境調整が効果的なことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データの連結をしていず、各施設で分担した研究を行っている。記憶障害を呈した若年脳損傷者を対象とする生活支援、社会支援に関する研究を意図しており、当初、研究対象者は小児や未成年者など若い層を中心とし、しかもデータの連結を意図していた。しかし一部の施設において運営方針やスタッフの変更があり、若年者の取り扱い例が少なくなり長期経過も追いにくくなった。また対象者の同意を得ているとはいえ、院外に患者情報を持ち出すことの限界もあった。そのため、平成26年度は研究者・研究協力者の所属する施設ごとの対象者における研究を行った。その結果、記憶障害を呈する様々な疾患や支援の多彩な側面が明らかになった。そして平成27年度も同様の手法を継続し、それぞれが分担した分野で順調に研究が進んでいる。 平成26年度には、小児期に発症した例の長期経過と支援について検討が手薄であった。その点を補うために本年度は新たな研究協力者(中島友加 大塚恵美)を加え、主に学童期の脳損傷により記憶障害を呈した若年者がどのような経過をたどるのか、教育支援や成人後の生活支援、社会支援では何が必要なのかについての検討を加えた。また、所属が研究機関から医療機関に変更になった大賀優は、研究協力者として研究を再開するために「小児頭部外傷における高次脳機能障害について」諸外国の研究状況を調査した。
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Strategy for Future Research Activity |
神経心理検査結果の経過や画像による損傷別病型別の違いを視野に含めて本研究を遂行する。したがって、生活状況、社会適応状況のみを把握する類のアンケートや聞き取り調査形式の研究では不十分で、平成26年度27年度に行ってきた通り、医療的にリハビリテーションや介入を行っている例による研究を続ける。 具体的には各施設で分担した研究を引き続き継続し、知見を論文化する。すなわち、「健康増進施設による支援研究」「特殊な疾病による記憶障害への支援研究」「小児期発症例に対する支援研究」「小児頭部外傷における高次脳機能障害研究」「単一疾患における記憶障害の支援研究」等を、それぞれの施設における効果的な生活支援、社会支援を、在り方も含めて文章化する。平成28年度末の研究報告会で発表し、全体の総括をして報告書を作成する。
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Causes of Carryover |
平成27年度、複数施設でデータを連結しての全体での調査研究が実施できなかったため、通信交通費、会議費用の費用に余剰が生じた。また研究を論文にまとめる作業が一部遅れ、それにかかる費用に余剰が生じた。 さらに研究成果を報告書として印刷し、関係各機関に郵送配布するための費用を十分に確保する必要があった。すなわち平成28年度に予定している作業を行う際に必要とされる費用を余剰としてある。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
各研究者・研究協力者(大賀優、青木重陽、中島友加、大塚恵美子)の研究遂行する費用に使用する。また、研究成果発表のための学会参加費用、旅費等に使用する。さらに、平成27年度、28年度に実施した研究を論文にまとめる際の費用、英文校正費用にあてる。 各研究者・研究協力者の研究を総括して、全体のまとめをするための連絡費、論文作成費に使用する。全体の研究成果報告書を印刷し、関係各機関に郵送配布する費用に使用する。
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Research Products
(15 results)