2014 Fiscal Year Research-status Report
日本のソーシャルワークにおけるコンサルテーションのスキル開発
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26380775
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
北本 佳子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (30296363)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / コンサルテーション / 内部コンサルタント |
Outline of Annual Research Achievements |
研究初年度ということで、交付申請書に記載した計画に基づき、文献研究とフィールド調査(参与観察)に基づく研究を実施した。具体的には、文献研究では社会福祉の関連分野(心理・教育・医療・経営等)における文献・論文を収集し、来年度に実施予定の本調査に向けての枠組み作りを検討した。 一方、フィールド調査(参与観察)に関しては、上記の文献研究や実際のソーシャルワーカーの職務の実態から、多職種間における内部コンサルタントとしての役割が実態としては行われつつも、それが意識化や可視化されていないことが窺われたことから、今年度は主に内部コンサルタントとしての役割に注目して、探索的な研究を実施した。その結果、会議場面で用いられている31の発話行為(コンサルテーションスキル)を抽出したほか、内部コンサルタントとして、課題解決に向けたコンサルテーションとプロセス志向のコンサルテーションが実際に行われていることを分析・考察した。その中でも、従来の研究からは、コンサルテーションというと「助言」や「指導」といったスキルのみが求められるような理解がされがちであったが、それ以外にも情報の収集に向けた「確認」や「質問」が適切にできるスキル、自らが把握している情報や知識等を他職種に「報告」や「説明」するスキル、それらを統合して「指示」や「助言」につなげていく統合的なスキルが重要であること、さらにはそれと合わせて「合図」や「促し」「依頼」「感謝」「励まし」「心配」「ねぎらい」といった会議の進行や会議に参加している人の関係性を適宜配慮できるスキルの必要性も明らかになった。 今後は、今回実施できなかった同職種間や会議場面以外でのソーシャルワーカーのコンサルテーションのスキルや、経営にかかわるコンサルテーションや外部コンサルタントとしての役割などを、それが求められるコンテキスト(背景)を踏まえつつ研究していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画では、文献研究とコンサルテーションのスキルの抽出に関する探索研究を行い、来年度の本調査に向けた枠組みつくりを行う予定であった。しかし、今年度はコンサルテーションの中でも、文献研究結果や実践場面での現状に基づいて、内部コンサルタントに注目して調査を実施したことから、探索的な調査ではあるが、内部コンサルタントとしてのスキルを抽出することができた。この点からは、計画以上に順調であるが、一方で、外部コンサルタントとしてのスキルや経営や代弁等にかかわるコンサルテーションのスキルにかかわる研究は、文献研究に終わったため、おおむね順調という評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は研究2年目ということから、当初の計画に基づき、ソーシャルワーカーが行っているコンサルテーションのスキルの抽出に向けた調査を、参与観察やインタビュー調査を通して実施する予定である。ただし、コンサルテーションの内容によっては、参与観察による方法等がむずかしい場合があることが窺われることから、その場合はインタビューや記録分析などによる代替的な方法によって、研究を遂行することとする。 特に、今年度は初年度の探索的な調査研究の成果を踏まえて、内部コンサルタントとしてのスキルとして抽出したものの妥当性や信頼性を高めるとともに、外部コンサルタントしてのスキルや経営や代弁等にかかわるコンサルテーションスキルに関する調査研究を遂行していく。 また、平成26年度の文献研究の結果、やはり社会福祉の分野よりも関連分野(心理・教育・医療・経営等)でのコンサルテーション研究が進んでいることが明らかになったことから、引き続きそうした関連分野の文献研究とともに、関連分野での学会・研究会等への参加による研究の遂行を図っていきたい。
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Causes of Carryover |
初年度(平成26年度)は、次年度(平成27年度)実施予定のコンサルテーションスキルの抽出に向けた調査枠組みづくりのプレ調査を行う予定であったが、平成23年度から25年度に助成を受けた科研費(コンサルテーションに関する研究助成)で、データを収集したものの、分析ができきれていなかったよいデータがあったため、そのデータをもとに、今年度の研究計画に基づく研究を実施し、論文としてまとめたため、当初予定していた調査にかかわる謝金や交通費等の使用がなく、予算との差額が生じた。 一方、その分、文献研究には当初の予定以上に多くの文献を購入し、来年度の本調査の枠組みづくりの検討をしたため、予算(物品費)をオーバーした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度(平成27年度)は、当初の予定通り、コンサルテーションのスキルの抽出に向けた調査を実施予定である。具体的には、参与観察やインタビュー調査を行う予定であるため、それに必要な謝金、交通費、テープ起こし代金等が必要となる。また、当初の計画通り、分析の精度を高めるため、質的調査用の分析ソフトを購入予定である。さらに、当該年度(平成26年度)の文献研究の結果から、ソーシャルワークの分野よりも関連分野(心理・教育・医療・経営等)の分野の方が、コンサルテーション研究が進んていることから、引き続き国内外の文献研究を行うととともに、関連分野の学会や研究会の参加により、最新の研究動向を押さえ、ソーシャルワークの分野でのコンサルテーションとの比較検討を行い、ソーシャルワークにおけるコンサルテーションの独自性や特徴を明らかにしていくための文献や資料収集代、関連学会・研究会への参加のための費用が必要となる。
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