2016 Fiscal Year Research-status Report
日本のソーシャルワークにおけるコンサルテーションのスキル開発
Project/Area Number |
26380775
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Research Institution | Showa Women's University |
Principal Investigator |
北本 佳子 昭和女子大学, 生活機構研究科, 教授 (30296363)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ソーシャルワーク / コンサルテーション / 内部コンサルテーション / 外部コンサルテーション / 福祉経営 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度には、主に以下の2つの研究調査を実施した。第一には、内部コンサルテーションと外部コンサルテーションを効果的に実施していると思われる組織(社会福祉法人)の経営者や施設長、人材育成担当者、現場の職員等にて、平成27年度に実施したインタビュー調査の内容をさらに深めるため、地域環境や組織の特徴、人材の育成や確保の問題など、コンサルテーションの実施にかかわる背景情報を中心に補足的なインタビュー調査(フィードバックインタビュー)を法人経営者(2名)に実施した。 第二には、平成27年度の研究成果をもとに、コンサルテーションのスキルに関するグループインタビューを全国6エリア(7会場)で実施し、78名のインタビューデータを収集した。これは、研究計画で当初予定していた参与観察が実践現場の現状から難しい状況であったため、参与観察に代わる代替の措置として、多様な情報収集が可能な最も妥当な方法として実施したものである。また、そのグループインタビューの実施の際には、承認を得られた5エリア(6会場)において、平成26年度・27年度の研究成果を含めたコンサルテーションに関する成果について、インタビュー協力者(ソーシャルワーカー等)を対象に講義(研修)形式で発表と説明をした。その結果、その受講者の反応から、本研究が目指すコンサルテーションのスキル開発についての有用性や現場からの開発に関する期待が確認された。 平成29年度は、前者のフィードバックインタビュー内容を織り込みながら、内部コンサルテーションと外部コンサルテーションを行っている組織の先行事例を論文としてまとめるとともに、後者のグループインタビューの結果を分析し、成果発表を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成28年度は研究3年目で、研究計画上は研究2年目に抽出したコンサルテーションに関するスキルをソーシャルワーカーと連携・協働する側(コンサルティ)に対して、その有用性を調査研究することが本来の到達目標であった。しかし、初年度の平成26年度には内部コンサルテーションを中心に一定程度のスキルの抽出はできたが、平成27年度の調査実施過程において、外部コンサルテーションに関しては、それを組織として行っている現場が少なく、当初の計画のようにその面での参与観察による協力が得られる状況でないことが明らかになった。そのため、平成27年度に研究の枠組み(研究方法を含む)を見直し、平成28年度は参与観察にかわる代替調査としてグループインタビューを実施した。 その結果、グループインタビューに関しては、全国6エリア(7会場)で78名のインタビューデータを収集できたが、現在その調査結果の分析を行う段階にとどまっており、交付申請書の計画と照らし合わせると、コンサルテーションのスキルの抽出が遅れていることから、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の調査実施過程を通して、参与観察による実証研究が難しいことがわかったため、研究の枠組み(研究方法を含む)を見直し、グループインタビューに切り替えて調査を実施した。一方、そのグループインタビューの実施過程において、平成26年度・27年度の調査結果が現場のソーシャルワーカーから、その有用性とさらなるスキル開発への期待があることが明らかになったため、平成27年度・28年度に実施したインタビュー調査(現在論文執筆中)も、平成28年度実施のグループインタビュー調査も、当初の予定通りの視点で分析し、成果を発表していく予定である。それに加えて、平成28年度実施のグループインタビューの参加者からは、今回のコンサルテーションの内容は、ソーシャルワークだけでなく、ケアワークを担う専門職も理解をすることが望ましいという意見が複数あったことからそうした意見を平成29年度の研究では反映する試みを入れる予定である。 以上から、平成29年度においては、交付申請書上は研究3年目に実施予定であったソーシャルワーカーと連携・協働する側(コンサルティ:ケアワークを担う専門職を含む)への調査を実施するほか、コンサルテーションの研究は、福祉(ソーシャルワーク)の領域よりも、他の関連分野(経営、心理、教育、医療等)の方が進んでいることから、引き続き関連分野の文献研究を行うほか、学会やセミナー、ワークショップへの参加を行う。また、経営面を含む組織レベルでのコンサルテーションについては、海外での実績があることから、海外の文献研究を行うほか、特に日本と同様にコンサルテーションのスキル開発に関心が高く、日本との比較調査が可能な海外(中国等)での調査を視野に入れて研究を深めていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、以下の3点による。第一には、当初の研究計画において実施予定であったソーシャルワーカーと連携・協働する側(コンサルティ)への調査が実施できなかったこと、第二には参与観察に代わる代替調査としてグループインタビューを実施したが、そのテープ起こしを次年度(平成29年度)に行うことにしたことと、その分析に必要な分析ソフトの購入を、新しいバージョンで購入するために次年度(平成29年度)に回したこと、第三には研究にかかわる情報収集や資料収集のために、様々な学会や各種研究会等に参加予定であったが、グループインタビュー調査の日程調整と重なったり、勤務先の行事・業務と重なったりしたため、その実施ができなかったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度においては、まず平成28年度に実施したグループインタビューの分析と成果発表を行うため、それに必要なテープ起こしと分析に必要なソフトを購入予定である。 また、当初計画にのっとって、ソーシャルワーカーと連携・協働する側(コンサルティ)に対する調査を行うため、それに必要な調査実施費用を支出する予定である。また、これまでの調査から、コンサルテーションの中で外部コンサルテーションに関しては、国内では調査研究対象となるフィールドの獲得が難しい状況にあることから、国内外の文献調査をさらに実施するほか、様々な学会や各種研究会に参加するとともに、関連領域や海外(中国等)での先行事例調査や比較調査を視野に入れており、そのための研究費使用を計画している。
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