2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380786
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
岩崎 香 早稲田大学, 人間科学学術院, 准教授 (20365563)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 意思決定支援 / 精神障害者 / 成年後見制度 / ソーシャルワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
2005 年 4 月に成立したイギリスの MCA(Mental Capacity Act,意思決定能力法)に基づいたイギリスでの意思決定支援、オーストラリアのサウスオーストラリア州SDM(支援付き意思決定・意思決定支援モデル)に精通した水島俊彦氏(弁護士・2014年度英国エセックス大学ヒューマンライツセンター客員研究員)に知識供与を得た。また、スウェーデンのパーソナル・オンブズマンの意思決定支援に関する調査を実施し、その現状を把握した。その結果、共通していたのは支援者主導ではなく、障害当事者の意思を尊重した支援という点であったが、その仕組みは各国によって異なっていた。イギリスでは法的な枠組みが作られ、当事者にとっての善の利益を追求していく原則が明確に示されている点や、独立意思代弁人(Independent Advocate (IA))、ケア法独立意思代弁人(Independent Care Act Advocate= ICAA)といったアドボケイトを養成し、機能させている点で優れていた。日本国内でも2014年に批准された「障害者の権利に関する条約」の趣旨に沿った仕組みづくりが求められ、成年後見制度の在り方に関する議論も高まりを見せている。 そうした現状の中で、精神障害者のへの意思決定支援がどういう視点で行われているか、また、人材育成という視点から支援者の研究や研修への参加や効果への認識を探索するためのアンケート調査を公益社団法人日本精神保健福祉士協会の会員1500名を対象に実施した。現在その分析を行っている最中である。重篤な精神障害を持つ人たちの意思決定支援においては、障害当事者の意思をどう汲み取るのか、意思を発現するためにどのようなサポートが有効なのかが課題となる。その視点や手法を調査から明らかとし、人材育成に関して重要な方法論の提示のために活かしていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H27年度は、アンケート調査の実施・結果を分析を行い、意思決定を支援する際の具体的な基準・方法に関するツール案を作成することを予定していた。アンケートを実施するにあたって、当初は当事者、家族、支援者を含めたアンケートの実施を考えていたが、その意向に関しては、先行研究の参照を行うこととし、研究の比重を人材育成というところに置くとするならば、支援者の意識やスキルに焦点化したほうが効果的だと判断し、精神保健福祉士を対象とした調査とした。そうした研究の変更や、海外での現状を把握することに時間を要したこと等から若干の遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究の最終年にあたり、①昨年度実施したアンケートの分析を行う、②結果から、精神障害者の意思決定を支援する専門職の意識・スキルを明確化する、③先行研究及び、分析の結果から、精神障害者の意思決定を支援する専門職にとって有益な研修内容、ツールに関する提案を行う予定である。 まだ十分な分析は実施できていないが、公益社団法人日本精神保健福祉士協会会員を対象としたアンケートの集計結果からは、支援向上のために知識や情報が必要な時の入手経路として回答者334名中286名が学会や研修への参加を挙げており、実際の業務に活かすことができると考える研修手法として、6割以上がグループディスカッションを多用した研修、研修の内容として具体的な事例の使用と回答していることから、意思決定支援に関する事例を活用した研修の実施を予定している。また、研修の結果から効果を分析し、支援専門職の意思決定支援に関する具体的な基準・方法に関するガイドラインあるいはチェックリストの提案を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度にアンケート調査を実施・分析を行う予定であったが、アンケートの実施対象と内容に変更が生じ、調査が遅れたためにアンケートの入力等に関する費用を27年度中にすべて終えることができなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
アンケートのデータ入力等にかかる費用の支払いを今年度に行うことで、繰り越した金額の支出を行う。
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