2015 Fiscal Year Research-status Report
権利擁護と社会起業家精神を基盤としたコミュニティソーシャルワーカーへの変容課題
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26380789
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Research Institution | Yamanashi Gakuin University |
Principal Investigator |
竹端 寛 山梨学院大学, 法学部, 教授 (90410381)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コミュニティソーシャルワーク / 権利擁護 / 社会起業家精神 |
Outline of Annual Research Achievements |
この1年は、主に海外調査を中心に行い、「コミュニティソーシャルワーカー(CSW)が権利擁護を基盤とした実践を行う際に、どのような社会起業家精神(social entrepreneurship)が求められるのか、というCSWの変容課題とは何か」というコア部分に関する知見が得られた。 6月に出かけた香港のThe Asian Progressive Social Work Forum 2015は、香港や中国本土、マカオ、台湾で地域変革を求める進歩派のソーシャルワーカーたちが一堂に会する会議であり、雨傘革命やひまわり革命などの社会運動とソーシャルワークの関係についての熱心な発表や討論を垣間見ることが出来た。アクチュアルな問いがソーシャルアクションにどうつながるか、を実践する東アジアのソーシャルワーカーたちの実践は、CSWの変容課題への答えの一つと感じた。 また、9月にはフィンランドのオープンダイアローグとイタリアのトリエステ方式を取材し、12月にはトリエステでのBasaglia International Schoolに参加した。オープンダイアローグは精神医療の領域で、専門家と当事者・家族のコミュニケーション・パタンを変えることで、劇的に関係性と(結果として)本人の症状が変わるものであり、このダイアローグのやり方は、地域での悪循環に立ち向かうCSWにも必要不可欠である。また、二度のトリエステ訪問によって、ソーシャルアクションが実際に地域に根付くための課題も、掴むことが出来た。 さらに、2016年2月にはスウェーデンで、「ノーマライゼーション育ての父」と言われるベンクト・ニィリエの足跡をたどる調査も行った。この中で、ニィリエが社会起業家精神を持って、当時の常識をひっくり返し、当事者のセルフアドボカシーを大切にして原理を作り上げていった、というプロセスを深く学ぶ事が出来た。この先人の軌跡は、CSWの変容課題を抽出する上でも、必要不可欠な鍵であると感じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初からスノーボール型の調査をデザインしていたが、香港やフィンランド、トリエステとも、この科研研究が始まった後にお声がかかり、出かけたものである。だが、見事に研究主旨に合致する内容であり、その成果は既にいくつかの論考にまとめることもできた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は研究最終年である。昨年度までで現地調査を数多くこなし、多くの実態を掴むことが出来た。そのインプット期間にも、既にいくつかのアウトプットをしてきたが、今年度はそのアウトプットを加速させたい。複数の学会発表や、論文執筆、また、それらを単著にまとめる作業などに着手し、広くこの研究を社会に還元することに心がけたい。
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Causes of Carryover |
2月のスウェーデン調査のテープ起こしが、残額よりも超過する可能性が高いため、年度を繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
6460円の残額ゆえ、テープ起こしの代金として、2016年度の予算執行時にはすぐに手続きを行う。
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