2014 Fiscal Year Research-status Report
「不在の感覚」から生成される社会福祉実践-「中動相」の地平に着目して-
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26380796
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
福田 俊子 聖隷クリストファー大学, 社会福祉学部, 准教授 (20257059)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソーシャルワーカー / 臨床体験 / 現象学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、現象学を手かがりとしながら、ソーシャルワーカーの基盤を形成する「不在の感覚」によって生起する臨床体験の構造、及び体験前後における実践プロセスを「時間」及び「空間」の観点から、解釈・記述することを目的としている。今年度は、木村敏、國分浩一郎らによる「中動相」にかかわる基本的な文献を収集しながら、その概念等を比較検討し、さらにインタビュー調査の設計などを行った。 このほかに、本研究の基盤となった科学研究費補助金基盤研究(C)、研究課題番号:23530775で得られたデータを今一度精査した結果、臨床経験10年未満であるソーシャルワーカーのデータ分析から、以下のことが明らかとなった。 一つは、「不在の感覚」は、ソーシャルワーカーが「専門家としての自己がある」ことをゆらがされるような臨床体験を有した時に生じ、この感覚をもつことで、ソーシャルワーカーは「意図的に利用者と関与する」ことから解放されるという点である。 二つは、意図的な利用者との関与から解放されたソーシャルワーカーは、「ワーカー-クライエント関係」とは異なる関係を形成し、こうした新たな関係がつくられることによって、樽味伸が言うところの「素の時間」が生成されてくることが明らかとなった。この研究成果は、改めて調査協力者に対し、本成果の発表にかかわる許諾を得た上で、現象学関連の研究会及び研究紀要に報告した。また、本研究課題のインタビュー調査を設計するにあたって、本成果は有益なものとなり、来年度に実施する調査協力者の臨床経験を当初は15年以上とする予定であったが、これを5年以上に変更することとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度の研究計画は、先行研究の検討、及びインタビュー調査の設計であった。先行研究の検討については、検討結果のみをまとめ、論文を作成することはできなかったものの、そこから得られた知見を活用し、紀要論文を作成することができた。また、調査の設計については、調査を依頼することが可能な地域を選定し、調査協力者の人数や質問項目などを設定したが、実際に協力者に依頼をすることはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、設計した調査を筆者が所属する倫理委員会に申請する。委員会より調査実施の許諾が得られた後に、選定地域のソーシャルワーカーに調査を依頼する。依頼にあたっては、これまでの研究成果を簡潔にまとめた報告書を作成し、依頼書と共にこれを郵送する。実際の調査は、2015年11月から2016年3月までの期間で実施の予定である。調査協力者には、原則として2回の調査を依頼する。そこで得られたデータは、すぐにテキスト化し、分析する。
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Causes of Carryover |
今年度は調査の設計までしか達成できず、実際に協力予定者に調査を依頼することができなかったため、それにかかわる物品や旅費などが大幅に残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は今年度達成できなかった調査を依頼した後、実際のインタビュー調査を実施する予定である。したがって、今年度及び次年度の助成金は、計画通りに執行する予定である。
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Research Products
(2 results)