2015 Fiscal Year Research-status Report
「不在の感覚」から生成される社会福祉実践-「中動相」の地平に着目して-
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26380796
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
福田 俊子 聖隷クリストファー大学, 社会福祉学部, 准教授 (20257059)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ソーシャルワーカー / 自己生成 / 中動態 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソーシャルワーカーの自己生成プロセスにおける臨床体験の構造を明らかにすることを目的とし、今年度は、インタビュー調査を実施することが主たる研究計画であった。しかしながら、今一度、前調査で得られているナラティブ・テキストを詳細に分析してみたところ、以下の知見が新たに見出された。 一つは、「節目」となる臨床体験は、「能動」と「受動」が反転したり、交差したりする「中動態」で生起する事象となっている点である。「節目」となる臨床体験は、状況に「巻き込まれる」ことを基点として生起していて、行為する人自身が、行為する過程の内側にいるといういわゆる「中動態」における事象であることが明らかとなった。 もう一つは、「節目」となる臨床体験は、「問い」と「応答」の往還によって構成される円環構造の内で生じているという点である。具体的には、状況に「巻き込まれる」ことで、ソーシャルワーカーが「人としてのあり方」、すなわち「個人的自己」でも「専門的自己」でもない「自己のあり方」が、利用者によって問われ、自己に不足しているものの自覚が促されていた。このような「問われる」ことと「応答する」ことが往還する構造を中核としながら、「巻き込まれる」「教えられる」という要素が加わり、これら三者による円環構造が成立しているのである。 以上の視点を加味しながら、今年度は調査設計を再考した。その結果、これまでは「臨床経験20年以上」を有するソーシャルワーカーに限定し、調査協力を依頼する予定であったが、本研究の普遍性を確保するために、「臨床経験20年未満」の者も加え、できるだけ多様な協力者に本調査へ参加してもらうこととした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前調査のナラティブ・テキストを精査することに傾注したことで、先述の通りに新たな知見を発見することができたのだが、そのために、今年度インタビュー調査を予定通りに実施することができなかった。しかしその一方で、調査設計自体を見直すことができたため、次年度に向けてさらに精度を高めた調査が可能な体制を整えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
調査の実施が1年遅れたため、研究期間を当初の3年から4年へと変更し、来年度に調査の実施と調査結果の分析、再来年度には調査結果の分析と報告書の作成に取り組む予定である。
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Causes of Carryover |
今年度に計画していたインタビュー調査が実施できなかったため、調査にかかる旅費、謝礼、テープ起こし代金にかかる支出全てが未使用となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に調査を実施する予定であるため、今年度の未使用額は全て来年度に支出する予定である。
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