2015 Fiscal Year Research-status Report
心中による虐待死の未然防止に向けたチェックシートの開発
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26380797
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Research Institution | Seirei Christopher University |
Principal Investigator |
石川 瞭子 聖隷クリストファー大学, 社会福祉学部, 教授 (50330634)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 喪失体験 / 支援機関の枠組み内の対応 / 心中のリスク感度 / 家族の生活上の問題 / 母親の自己の危機 |
Outline of Annual Research Achievements |
以下に、テーマ別に見出された知見を研究実績として報告する。 【テーマ1】西岡弥生(研究協力者:聖隷クリストファー大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程在籍):①二重ABC-Xモデルによる9事例の家族危機形成プロセスの分析結果:家族の生活上の問題として、9事例の母親の原家族に機能不全があり、〔前危機段階〕母親は祖父母からの物心のサポートがない状況で、脆弱な生活基盤の上で妊娠・出産に至った。〔危機発生〕事件発生5ヶ月~7ヶ月前に、母親の自己が脅かされる大きな「喪失体験」があった。具体的には、母親の子育て遂行に影響を与える成員との関係の「喪失」が主で、離婚、別居、転居、失業、住居の喪失、関係の破綻等である。〔後危機段階〕「喪失」が累積し生活破綻をきたし家族機能が崩壊し「心中による虐待死」が発生した。②支援者側の対応:母親が表出するSOS(電話相談で不安を訴える、自傷行為後に自ら110番通報をする等)に対し、情報収集→関係機関に連絡→支援機関の枠組み内で対応(母親は医療的処置、子どもの安全確認等)に留まり、母親の精神不安の背景にある家族の生活上の問題の聞き取りや介入までおよばず、家族の生活上の問題は残されたままだった。 【テーマ2】西岡弥生(研究協力者:聖隷クリストファー大学大学院社会福祉学研究科博士後期課程在籍):回収率17.5%:選択肢20項目回答分析結果:検証報告書(厚生労働省,2013)の「心中による虐待死」の養育者の心理的・精神的問題等に示されたデータを基に、西岡独自に「心中のリスク感度」を算出し群わけを行い、支援者の「家族の生活上の問題:7項目」への認識について検討した。その結果「心中のリスク感度」が高いほど、「家族の生活上の問題:7項目」への認識も高いことが示された。また、「家族の生活上の問題:7項目」のうちで、「喪失体験」が「心中による虐待死」の背景要因として特化した問題であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【テーマ1】【テーマ2】【テーマ3】において、当初の予定通りおおむね順調に進展している。 【テーマ1】自治体報告書で検証された「心中による虐待死」事例9事例について、フィールドワーク、インタビュー調査、資料収集によって収集したデータを統合し、9事例の家族の生活実態を把握し、分析を完了し知見を得た。 【テーマ2】対象機関873か所(保健所、精神保健福祉センター、A市精神科医療機関、B市精神科医療機関)から調査票を回収し集計及び分析を完了し、知見を得た。 【テーマ3】未然防止に向けたチェックシートの作成に向けて、【テーマ1】【テーマ2】の進行等を調整した。 以上をもって、本研究は当初の予定通りおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
【テーマ3】【テーマ1】と【テーマ2】の結果を統合し、「心中による虐待死」の未然防止に向けた暫定的チェックシートを作成する予定である。
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Causes of Carryover |
【テーマ1】【テーマ2】については、殆ど完了した。【テーマ3】については、当初2015年度に実施する予定であったが、【テーマ1】【テーマ2】の統合を中心に実施したため、【テーマ3】は次年度に実施することとなり、旅費等の経費がかからなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
【テーマ3】成果報告並び成果物の作成を実施する。具体的には、著書、学会発表、チェックシート作成費用として使用する予定である。 以上が、使用計画である。
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