2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380802
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
永田 祐 同志社大学, 社会学部, 准教授 (90339599)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | パーソナリゼーション / ダイレクトペイメント / 個別予算 / 規制された現金給付 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一定の規制のもとで高齢者本人が自らのサポートの内容を選択できるようにする政策と実践(「規制された現金給付」)の可能性を探求し、その問題点を明らかにすることで、日本の介護保険における導入の可能性について検証することである。27年度は、規制された現金給付が本人のみならず、本人を介護する介護者に拡大されていること、また、イギリスでは2015年からケア法(Care Act 2014)が本格施行されたことなどに鑑み、その影響を含め、文献による調査及び現地での調査を行った。 ケア法は、個人予算を法制化したため、社会サービス利用者のうち、自らサポート内容を選択する本制度を活用する利用者の割合が上昇している。一方、イギリスでは引き続き緊縮財政が継続しており、こうした中では個別予算が責任を個人単位化し、福祉サービスの「公共性」を衰退させていることが懸念されている。 また、現地調査では、介護者に対する現金給付について二つの全国団体においてインタビュー調査を実施し、ケア法の影響及び介護者への現金給付も含め、本研究でいう規制された現金給付の高齢者及び介護者の影響について調査を行った。調査の結果、ケア法では、これまでガイドラインに示されていたにすぎなかった個別予算が法的に位置づけられ、介護者に対するアセスメントの実施も法制化された一方、自治体の緊縮財政の影響などにより、アセスメントを受ける権利が法制化されたとしても、実際にサービスを受けることができる人の数は減少している実態が明らかになった。ただし、個別予算やアセスメント受ける権利が法制化されたことで、本人及び介護者がこうした権利を認識できるようになった点は評価されていた。イギリスの福祉行政は、各自治体の裁量が大きいが、今回の調査では、本人及び介護者に対する現金給付を積極的に進め、一定の実績がある自治体について、全国団体の立場から情報収集することもできた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年夏と28年春にそれぞれ訪英し各2地域においてインタビュー調査を実施する予定であったが、校務等の都合により、28年夏の訪英調査を断念せざると得なかった。そのため、費用を繰り越し、28年度に2回の訪英調査を実施して研究を進めることを予定している。27年度の訪英調査で得た情報なども踏まえ、効率的な調査を実施し、研究課題を期間中に明らかにしていく予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年は、本研究のリサーチクエスチョンである「『規制された現金給付』の問題点を明らかにするとともにそれを軽減し、サポートの選択を可能にするための仕組みや実践は何か」について研究の総括を行う。そのために、①自治体のソーシャルワーカーおよび②それを利用している高齢者とその介護者、③非営利組織の関係者の視点から多角的に精査する。本人及び介護者については、実際の調査が難しい場合は、それを支援している非営利組織等にインタビューを行うことで補う。今年度はこれまでの調査から、調査対象としてロンドン市クロイドン区において、このような多角的な調査を行うことを予定している。また、引き続き文献調査を行い、現地協力者とも連携を取りながら調査を進める。
|
Causes of Carryover |
平成27年夏と28年春にそれぞれ訪英し各2地域においてインタビュー調査を実施する予定であったが、校務等の都合により、28年夏の訪英調査を断念せざると得なかった。そのため、費用を繰り越し、28年度に2回の訪英調査を実施して研究を進める。27年度の訪英調査で得た情報なども踏まえ、効率的な調査を実施し、研究課題を期間中に明らかにしていく予定である。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
28年度に繰り越した費用は、主に27年度に予定していた訪英調査を28年度に追加して行う訪英調査に充て、28年度の助成金については予定通りに使用する計画である。
|