2016 Fiscal Year Research-status Report
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26380802
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
永田 祐 同志社大学, 社会学部, 准教授 (90339599)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 規制された現金給付 / ダイレクトペイメント / 個別予算 / ケアラー支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一定の規制のもとで高齢者本人が自らのサポートの内容を選択できるようにする政策と実践(「規制された現金給付」)の可能性を探求し、その問題点を明らかにすることで、日本の介護保険における導入の可能性について検証することである。28年度は、26,27年度の成果を踏まえ、文献による調査及び9月と3月に2回の現地調査を実施し、自治体のソーシャルワーカー加え、Alzheimer’s Societyのような全国団体、またpersonal assistanceと呼ばれる介助者の組織化を行っている労働組合、介護者支援組織や当事者団体など多角的な視点から、規制された現金給付の影響について調査を行うことができた。 調査の結果、ケア法の施行によって、社会的ケアを必要とする人が現金給付によって自らサポートの内容を選択することが権利として明確化されたことを関係者は高く評価しているものの、保守党政権下で継続している緊縮財政の影響によって、実際にそうした権利を実現できるようなサポートの水準が確保できていないという実態が明らかになった。また、そのため、ケアを提供する介助者の賃金は最低賃金レベルにとどまっており、本人が現金給付を選択しても、介護者を確保することに苦労する事例が多いことも分かった。介護者(ケアラー)支援についても、介護者に対する現金給付の予算が十分確保できておらず、実際の現金給付による支援は、経常的な介護に対する支援というよりは、一回限りの休暇などに対する費用にとどまっているということも明らかになった。規制された現金給付は、本人や介護者の選択する権利を認め、自らの生活をコントロールする可能性を開くものであるといえるが、一方でそれを裏付ける財源が確保されていない状況では、介助者の労働条件が劣悪になったり、介護者支援が限定的にならざるを得ない可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
調査の実施時期が3月下旬となってしまったため、研究の最終的な成果が十分まとめられていないが、延長を認めていただいたので、調査結果を踏まえ、最終的な成果を29年度中にまとめる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現地調査についてはすべて終了しているため、これまでの調査結果を踏まえ、成果をまとめる。
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Causes of Carryover |
2015年度に行う予定だった現地調査が校務等の事情から十分に実施できず、本来2016年9月に現地調査を完了させる研究計画であったが、2017年3月にも現地調査を実施することになった。そのため、当該調査に係るテープ起こしやその結果を踏まえた論文作成等に費用を要するため補助期間の延長が必要になった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の通り、2017年3月に実施した調査のテープ起こし、その結果を踏まえた論文作成等の費用として使用する予定である。
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