2017 Fiscal Year Annual Research Report
The impact of personal budgets and Direct Payments on older people
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26380802
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
永田 祐 同志社大学, 社会学部, 教授 (90339599)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 規制された現金給付 / ダイレクトペイメント |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一定の規制のもとで高齢者本人が自らの支援内容を選択できるようにする政策と実践(「規制された現金給付」)の可能性を探求し、その問題点を明らかにすることで、日本の介護保険における導入の可能性について検証することである。29年度は、これまでの現地調査の結果を踏まえ、調査研究の総括と日本の介護保険における導入の可能性について検討した。これまでの調査を踏まえると、規制された現金給付を高齢者に適用する場合の問題点として以下の点が明らかになった。 第1に危機的な状況になってから支援につながっても本人の意思に基づいた支援を導入することが難しいこと、第2に支援の内容を指定されたサービス以外に拡大することは、結果として地方自治体が行ってきたサービスの削減につながり、個別予算が責任を個人単位化し、福祉サービスの「公共性」を衰退させていることにつながる恐れがあること、第3に一人一人に割り当てられる支援の総量が少なければ、そもそも支援を自由に選択できても高齢者の福祉(wellbeing)が改善しないこと、第4に高齢者を支える家族等への支援を併せて考えていく必要があることなどが示唆された。 また、支援の個人単位化は、介護労働にも影響を及ぼしていることも明らかになった。個人が割り当てられた現金給付の中から指定されたサービスだけでなく、自由に支援を組み立てていくことになると、介護労働も個人単位化する。結果として、パーソナルアシスタントと呼ばれる時間単位で就労する介護労働者の割合が増加し、安定した雇用が減少する危険性も示唆された。 こうした課題は、イギリスが現在緊縮財政下にあり、サービスの受給資格要件が厳格化、公的な支援の対象となる人が縮小、一人ひとりへの予算の削減と、現金給付による支援の個人単位化が同時進行で行われた結果生じていると考えられた。
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