2014 Fiscal Year Research-status Report
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26380805
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
朴 光駿 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (30351307)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者福祉 / 高齢者貧困 / 東アジア社会政策 / 国際研究者交流 / 家族主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、日本国内外における家族主義の学術的用例を包括的に収集し、分析した。家族主義は権威主義国家体制と切り離しては考えられないという観点から、高齢者扶養の責任を家族に転嫁してきた歴史的流れとその具体的政策手法を明らかにするために、主に中国において2013年に改正された高齢者権益保障法の内容を分析し、家族扶養の範囲を明らかにした。韓国の老人福祉法における高齢者家庭扶養規定をも分析を終えている。 家族主義の概念を具体的に表わす用例は極めて少なく、エスピン・アンデルセンは家族主義(familialism)を「女性の家事労働によって家族内の育児や高齢者介護問題が解決されること」の意味として使っているのが、こうした具体的用例については特に注目し、資料を収集した。 中國と韓国における高齢者扶養と家族主義との関係を調べるための訪問調査も行った。5月20日から中国延辺地域の高齢者福祉状況や家族扶養実態の調査を行った。延辺大学の関連専攻教員、延辺州老齢工作委員会の主任、高齢者福祉施設の施設長などとの面談調査も行った。延辺地域については、8月17日から第2次調査を行っている。韓国については7月に韓国社会政策研究院、8月16日には韓国保健社会研究院の研究員を対象にした聞き取り調査、資料収集を行った。2015年2月には釜山市立釜山福祉開発院を訪問し、高齢者福祉や高齢者貧困に関する資料を収集した。 研究報告としては、11月22日韓国保健社会研究院主催の「アジア社会政策フォーラム」での報告、12月には国立慶南科学技術大学にて報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進んでいる。第1年次の文献調査もほぼ終わり、韓国現地調査と中国現地調査をそれぞれ2回実施し、専門家との面談調査による情報収集を行っている。 研究中間報告も韓国保健社会研究院にて行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の研究計画は、家族主義の政策手法を示す具体的政策事例を収集確認し、明確化するということである。高齢者扶養の責任を家族や企業に求める政策を実施する一方で、国家は高齢者を扶養する家族に対する非公式的支援(例えば、人事における優待)や税制上の優遇をもって、そうした政策への抵抗を和らげてきたが、その政策内容を分析し、家族主義が国家の非公式的支援によって支えられてきたことを明らかにする。 また、家族主義の傾向がなぜ国家別に異なるのかを説明するために、日本―韓国の介護保険制度の高齢者財政負担状況を比較分析する。65歳以上高齢者の約2/3が保険料を免除されている韓国(2010年基準)と高齢者全員が保険料負担をしている日本の違いを説明し、その違いの背景に家族主義の傾向の差異があるということを明らかにしていきたい。 平成27年度の研究計画として重要なのは、2015年12月3日~12月6日までの日程(場所:佛教大学)で開催する予定の「東アジア高齢者福祉国際シンポジウム」である。本研究の海外研究協力者などの学者を日本に招待し、シンポジウムを開催し、研究の中間報告を行う。 平成28年度の研究目標は、国家の政策手法としての家族主義の概念を明確的に提示するということである。高齢者政策が固有の目的を持ったものではなく、経済成長政策の手段として扱われてきたことを「中国の1人っ子政策の高齢者福祉への影響」を素材にして明らかにし、具体的な高齢者政策の考察から明らかになった家族主義の概念を明確に提示する。
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Causes of Carryover |
韓国と中国の研究協力者と研究方向を協議する中で、2015年度に国際シンポジウムを開催し、その場で研究報告を行うことが望ましいということが決まっている。そのシンポジウムには中国から3人の研究者を招待することになっており、多額の費用がかかるために、海外調査費用をできる限り抑え、18万円余りを残している。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2015年12月に開催される東アジア高齢者福祉国際シンポジウムのため、3人の海外研究者の招待にかかる費用に充てる。
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