2015 Fiscal Year Research-status Report
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26380805
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
朴 光駿 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (30351307)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 東アジア家族主義 / 強い家族 / 発展主義 / 比較研究 / 新しい社会的リスク / 家族責任主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今までの研究成果を踏まえ、2015年12月に海外研究協力者を招待し、国際会議を開き、研究成果を報告し、意見交換や資料収集を行った。 この会議で、家族主義に概念規定に関する研究をまとめ、「東アジア家族主義と新しい社会的リスク」と題する論文で報告した。その論文では、社会政策分野で広く使われている「家族主義」という概念を具体化するための研究方法を提示し、比較研究を活用した研究方法によって考察された家族主義の事例を東アジア比較社会政策の観点から示した。家族主義の理解には「家族主義か否か」という二分的把握ではなく「どれほど家族主義的なのか」という連続線(continuum)の考え方が必要であるという意見を提示した。また、家族主義が生み出す新しい社会的リスクの例として東アジアの自殺問題をとりあげ、新自由主義の世界的社会環境が家族主義という文化的要素と結合し自殺を増やしていくメカニズムを説明した。 家族主義は単に政策理念として抽象的に存在するものではなく、社会政策や社会サービス全般において、その運営原理としてあるいは政策手法として具体的に確認できるものであることを提示した。家族主義の概念には家族責任優先という考え方に加えて、①権威主義、②発展主義、③強い家族(strong family)の神話と関連し合っていることを明確にした。 家族主義の事例研究としては、日本の1980年代に、福祉削減とともに専業主婦を優遇する税制福祉が同時に行われたこと、そして、日本と韓国の国民年金制度において専業主婦に対する処遇の比較、という2つの事例を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は順調に進んでいる。 研究結果報告のための国際学術集会は、当初2016年に予定されていたが、2015年12月に佛教大学総合研究所の脱貧困プロジェクトの総括シンポジウムが予定されていたので、その中で分科会を設け、国際学術報告会を組織した。その際に、韓国と中国の海外研究協力者が同シンポジウムの報告者、シンポジストとして招かれた。研究報告会は予定よりは数か月前倒しになったが、研究の進捗状況はおおむね予定通りの進められているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)家族主義の影響に関する聞き取り調査:家族主義の影響、特に東アジアの高齢者介護施設の発展に対する影響を考察し、さまざまな高齢者施設の施設長、地方官僚から聞き取り調査を行う。また、中国のほとんどの地方政府は、1970年代末から実施された1人っ子政策を守った高齢者だけを対象とした高齢者手当制度を設けているが、そうした政策の正当性について、関連専門家から意見を聴取し、その制度に対する総合的評価を行う。 (2)補足的聞き取り調査の実施と研究のまとめに向けての検討:今までの研究や聞き取り調査結果をふまえ、必要な場合、研究を補足するための専門家意見調査を行う。 (3)研究成果の報告:研究成果の報告を、2016年9月10日~11日大分大学で開かれる第12回東アジア社会保障国際会議で報告し、専門家からのコメントを参考にしながら研究の完成度を高めていく。 (4)研究成果のまとめを行い、報告書を作成・提出する
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Causes of Carryover |
2016年に開拡されていた国際研究集会を数か月前倒しし、2015年12月に開催したため、20万円の前倒しを申請し、海外学者の招聘旅費などに対処した。その後、海外調査が3月末に行われ、調査は終わっているが、その清算ができていない状況になっており、そのために次年度使用額が181,986円になっている。3月末の旅費清算が終われば、残額はほぼゼロになるのではないかと思われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度の使用額は計画よりは20万円ほど少なくなるが、2016年度開催予定であった国際研究集会はすでに2015年度に実行され、その分の出費は2016年度には不要になったので、2016年度に研究活動に支障は発生しない。国際研究集会を除くと、研究計画通り研究を進めることができる。
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