2016 Fiscal Year Annual Research Report
Famialism in the East Asian Social Policy for the Elderly
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26380805
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
朴 光駿 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (30351307)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 家族主義 / 東アジア家族主義 / 東アジア比較社会政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の第一の目的は、東アジア社会政策の最も著しい特徴の1つとして国内外から指摘されてきた「家族主義」と呼ばれる抽象的な政策理念が、実際の東アジア高齢者社会政策にどのように働いているのかを具体的政策事例をもって、明確に示すことである。また、研究方法の面においては、日本ではほとんど試みられていない「概念を明確にするための比較研究」を通して家族主義の概念をより具体的に示すことによって、比較研究方法の発展に資することである。 3年間の研究を通じて、社会政策分野で広く使われている「家族主義」という概念を具体化するための研究方法を提示し、比較研究を活用したその研究方法によって発見された家族主義の事例を示すことができた。家族主義に対しては「家族主義か否か」という二分的把握ではなく「どれほど家族主義的なのか」という連続線(continuum)の把握が必要であるという立場で研究が進められた。また、家族主義が生み出す新しい社会的リスクの例として東アジアの自殺問題をとりあげ、新自主主義の世界的社会環境が家族主義という文化的要素と結合し自殺を増やしていくメカニズムを説明することもできた。 このような研究によって、概念の規定や区分を行わないまま、たとえば東アジア福祉レジームの核心的特徴の1つは家族主義であるといった抽象的論議が繰り返される傾向が是正されることが期待できる。家族主義は単に政策理念として抽象的に存在するものではなく、社会政策や社会サービス全般において、その運営原理としてあるいは政策手法として具体的に確認できるものであることも論証されたと思われる。
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