2015 Fiscal Year Research-status Report
HIV陽性者への医療ソーシャルワーク支援のガイドライン作成に関する研究
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26380812
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Research Institution | Osaka University of Human Sciences |
Principal Investigator |
大野 まどか 大阪人間科学大学, 人間科学部, 教授 (00340886)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | HIV陽性者 / 医療ソーシャルワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はエイズ診療拠点病院においてHIV陽性者への支援経験のある医療ソーシャルワーカー4名の協力を得、支援の内容を詳細に洗いだすこととその整理,分析を行った。具体的には、陽性者支援において踏まえるべき知識、実際に行っている業務等について可能な限り細かく収集することに留意し、調査対象者が、支援に必要だと「考えて」いること、「関係があると考える」ことを列挙した。KJ法を参考に協力者がカード1枚に1項目を基本として書き出したデータは193枚に上った。それら一つ一つを研究協力者全員でラベル作りを通して分析を行った。また、作業の中で個々の業務の意味、背景等について協力者から得られる語りをICレコーダーで録音し、新たなデータとして今後の分析や整理の際に活用することとした。 その結果、グループ編成の中では「医療費がいくらかかるのか」「長期療養の場の確保」「セクシュアリティについて」「仲間づくり」「社会参加への支援」「薬物」等21に分類することができた。その後、経験の浅いソーシャルワーカーが実際の支援の中で理解しやすいことを踏まえ、陽性者の感染判明からの生活と支援の時間の流れに沿って、「HIV/AIDSに関する支援を始める前の準備」「HIV陽性と判明した人の受診に関わる支援」「社会生活に関わる支援」「長期療養生活への支援」の4つの項目に分けて整理した。 これらの取り組みから、HIV陽性者への支援において医療ソーシャルワーカーが非常に多様で広範な支援を実際に行っていること、また必要と感じていることが明らかになった。また、セクシュアリティやメンタルヘルス(薬物等)への理解、病気についての他者への告知に関する問題等のHIV陽性者への支援に特徴的な事柄や留意点が見えてきたと同時に、ソーシャルワーク支援の根底をなす知識、技術、価値が改めて強く必要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は、医療ソーシャルワーカーへの個別インタビューを計画していたが、機関の特性や患者数等の診療環境を超えてソーシャルワーク業務と支援に必要と考える項目を抽出するために、グループインタビューと分析の手法を変更した。この点については意義があったと考える。しかし、協力者で行う分析に時間がかかり、ガイドライン原案の作成には至らなかった。また、陽性者の生活問題を把握するための予備調査として陽性者への個別インタビューを計画していたが、研究協力者との検討の結果、実施の必要性が低いと判断した。以上の状況から進捗状況をやや遅れていると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
まず第一にガイドライン(原案)の作成に取り組む。今年度データ分析、整理した結果抽出した項目について調査協力者による執筆作業にすでに入っている。会議を重ねながら、ガイドライン作成を進める。 次に、完成したガイドラインを経験の浅い医療ソーシャルワーカー数名の協力を得、評価を行う。ここで得られた評価をもとに、ガイドラインの見直しを行い、完成させていく。
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Causes of Carryover |
研究方法の変更に伴い、インタビューを実施しなかったため、インタビュイーへの謝金支払いが行われなかった。また調査協力者を関西で得られたため、国内旅費が発生しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度には、ガイドライン原案の印刷のためのプリンターの購入、原案の評価をうけるための専門職への謝金、完成物の印刷と郵送による配布等に使用する予定である。また旅費に関しても研究の進捗に合わせて使用する予定である。
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