2016 Fiscal Year Annual Research Report
Intimate partner violence and its correlates: How did it happen and how do people perceive it?
Project/Area Number |
26380844
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森永 康子 広島大学, 教育学研究科, 教授 (60203999)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 親密な関係における暴力 / 被害者非難 / 道徳性 / 客観性 / ステレオタイプ / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
配偶者や交際相手からの暴力を「親密な関係における暴力(IPV: Intimate Partner Violence)」と呼ぶ。本研究はIPVを含めた暴力の認識と心理学的変数の関連を問いつつ,暴力発生のメカニズムを検討することを目的としたものである。 平成28年度には,IPVを含めた暴力の容認に関連する個人の特性に焦点を当てて検討した。特に,社会的に好ましいとされている特性のうち,1)道徳性と2)客観性をとりあげ検討を行った。 1)道徳性についての検討:IPV加害者の男性はそうでない男性よりも自分を道徳的であると思っているという海外の研究結果をもとに,道徳自認(自分をどの程度道徳的な人間だと思っているか)がIPV被害者の責任帰属(被害者非難)にどのように関連するかを検討し,道徳自認が高い男性ほどIPVの女性被害者に責任帰属をすることを見出した。 2)客観性についての検討:男性が自分のことを客観的だと思うと,採用場面で女性を差別するという結果を見出した海外の研究を追試した。しかし,そうした結果は見られず,むしろ女性が自分のことを客観的だと思うと,男性に対する評価を変えるという結果が見出された。扱ったのは採用場面であるが,自分は客観的だと思うことで,IPVの加害者や被害者に対する評価が異なる可能性を示唆する結果が得られた。 以上のような検討を通し,自分が社会的に好ましいとされる特性をもっていると認知することで,暴力に対する認知や態度が影響を受けるというメカニズムについての示唆を得た。 研究期間全体を通して,IPVや暴力の認識にはジェンダーに関連する要因(性役割態度や性差別的態度など)だけでなく,個人の道徳性や集団間の関係についての信念なども関係することを見出した。さらに,その基礎として,社会で共有されているジェンダー・ステレオタイプが個人の認知や行動に与える影響についての示唆も得た。
|
Research Products
(9 results)