2015 Fiscal Year Research-status Report
社会的動機の充足プロセスにおけるネットワーク構造と組織システムの制御資源保存機能
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26380845
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
相馬 敏彦 広島大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (60412467)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 和寛 比治山大学短期大学部, 総合生活デザイン学科, 講師 (30462055)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 回避動機 / サポート / 相互作用 / 組織公正 / 自己制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、以下の研究により研究を進展させる示唆を得た。 第一に、親密な関係にある者を対象とする調査の結果、社会的回避動機の充足プロセスが関係外のネットワーク他者からのサポート取得と、サポートを必要とする場面による取得傾向のばらつきにより調整されることが示された。関係の相手と共通のサポーターの場合、サポート取得できることが回避動機の強い者の回避相互作用を達成させやすくしていた。一方、関係の相手と共通しない独自サポーターについて、サポート取得できることが回避動機の強い者の回避相互作用を達成させやすくしたのは、場面による取得傾向がばらついていない場合であった。いいかえれば、相手へのサポート取得を場面ごとに切り替えている場合、独自サポーターによる回避動機充足効果はみられなかった。同様の傾向は接近動機の充足についてはみられなかった。これら一連の結果は、情緒的な関係を展開する上でも、回避動機の充足にこそ制御資源が必要となる可能性を強く示唆する。 第二に、社会人を対象とする調査の結果、所属する組織からの公正な処遇が社会的アイデンティティの高まりを通じて、組織内での自己制御行動に影響することが確認された。これらの影響プロセスの内容は、雇用形態やキャリア志向によって異なっていた。長期的な所属の見込まれる正規従業員では分配的公正が重要となる一方、短期的な所属の見込まれる非正規従業員では対人的公正が重要となった。後者の結果に関してさらに分析を進めたところ、現在は非正規であっても長期的な雇用を望む志向をもった非正規従業員にとって特に対人的公正が重要であることが示された。これらは、組織への所属動機の違いにより、自己制御を可能にする組織公正システムが異なることを示している。 いずれも動機の充足に社会的環境変数が関与するプロセスについて重要な示唆を与える知見であり、今後関連学会で発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
親密な関係での検証について、当初の想定よりも明確な知見を得ることができた。また、組織・集団場面での検証についても順調に検討が進んでおり、全般にみておおむね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
既に、対人的相互作用や組織集団場面において、基本的な仮説を裏づける知見が示されており、今後はプロセスについて詳細に把握するための仲介変数を同定する必要がある。その測定には時系列データが適しており、一部計画を変更し対応する。
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Causes of Carryover |
今年度の研究成果の一部を国際学会で発表予定であったが、校務のため急遽キャンセルせざるを得なかったこと、ならびに次年度以降の仲介過程の解明に向け、新たな調査実施の必要があったことが主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
仲介過程の解明に向け実証研究を実施すると同時に、国際学会にて成果を公表する。
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