2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26380852
|
Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
熊谷 智博 大妻女子大学, 文学部, 准教授 (20400202)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 集団間紛争解決 / 尊敬 |
Outline of Annual Research Achievements |
集団間紛争解決に対する集団的尊敬の効果を検証するため、本年度は日本人のメタ・ステレオタイプ、特に有能さ、温かさ、尊敬のメタ・ステレオタイプが中国との和解的態度に与える影響を質問紙調査で検討した。具体的には128名の大学生を対象に、「中国人は日本人をどのように考えているか」についての推測であるメタ・ステレオタイプについて、有能さ6項目、温かさ5項目、尊敬2項目、更に中国との紛争解決に対する建設的態度として、政府による謝罪と補償を支持する程度、中国の態度の不公正さに関する項目を用いた。回帰分析の結果は尊敬に関するメタ・ステレオタイプを強く認知している人ほど、中国との紛争解決に対してより建設的な態度を強めていた。またその尊敬の感覚は有能さのメタ・ステレオタイプによっては影響されなかったが、温かさのメタ・ステレオタイプによって強められていた。従って集団間紛争解決を促進する要因として「日本人は尊敬されている」という自集団に対するポジティブな認知が有効であることが示された。これは従来の集団間接触などを通じて外集団に対するネガティブなイメージをいかに払拭するかというアプローチとは異なり、自集団のイメージを変えることが集団間紛争解決に有効であるという本研究課題の予測を支持するものである。更に有能さのメタ・ステレオタイプが効果を持たなかったことは、有能さが主に集団内尊敬に影響し、集団間では温かさの効果がより重要であることを示している。 本年度はより一般的なデータを収集すべく調査会社に依頼して、大学生以外の一般の人々を対象とした調査を予定していたが、質問項目の修正作業を年度内に終わらせることが出来ず、調査実施は次年度に繰り越すことになった。ただし、平行して国際比較の為の協力者を募り、アメリカでの調査実施の計画を進めることが出来たので、次年度の予定はその分早まった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は質問紙調査によって集団的尊敬の効果を検討することが出来たが、大学生のデータでの検証に留まってしまった。また当初の計画では同時に実験室実験によって外集団に対する尊敬を操作し、それが集団間紛争解決に与える影響を検討する予定であったが、国際比較のことを考え、国内で基礎的データを集めることを優先させた結果、計画に遅れが生じてしまった。しかし質問紙調査に関しては、項目の作成と海外での調査実施の目途が立ち、また国内での調査会社による調査実施も始められる段階に進んでいるので、最終的には当初目的を達成することができるだろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果から、自集団が尊敬されているという感覚が集団間紛争の解決的態度を強めることが明らかになったので、今後はその尊敬の感覚の規定因を探り、それを操作する方法を検討する。またアメリカ、イスラエル、ボスニアなどを対象とした調査を通じて、本研究の理論モデルの妥当性を検討し、来年度での応用の可能性を探る。
|
Causes of Carryover |
調査会社を利用して質問紙調査を実施する予定であったが、予備調査の結果に基づく修正作業に時間が掛かり、当該年度内に実施できなかった。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
調査会社に依頼する質問紙の原案は既に出来ているので、次年度前半に前年度予定分は実施する予定である。また海外での調査に関しても協力者との調整が済んでいるので、こちらも計画通り進める予定である。
|