2014 Fiscal Year Research-status Report
道徳、意図、確率、因果~不確実性と因果構造からみた道徳的判断の心理学モデルの構築
Project/Area Number |
26380853
|
Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
中村 國則 成城大学, 社会イノベーション学部, 准教授 (40572889)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 意図性判断 / 確率 / 因果構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
意図性判断と因果構造・確率の影響に関する検討をKnobe (2013)あるいは中村(2013)の刺激を用いて行った.意図性判断を構成する因果構造としては,行為の主体と客体があるとして,主体自身の事情を目的として,結果的に客体に何かが生じる場合と,客体に対する働きかけを目的とした行為が,主体にも何かの結果をもたらす場合の双方があり得る.そしてこれまでの研究では前者の状況はさまざまな形で検討してきたものの,後者の状況ではほとんど検討を加えていない.加えて,これらの状況間での意図性と道徳性の判断の関係,あるいは因果構造と意図性判断のとの関係は全くといっていいほど検討されていない. そこで本年度ではこのような因果構造の意図性判断に対する影響を検討した.具体的には,行為の結果が主体に影響する状況と客体に影響する状況の双方を設定し,それぞれの条件で行為の結果が意図性判断に影響するかどうかを検討すると同時に,状況間で影響の仕方に違いがあるかどうかも分析した. 検討の結果,因果構造の影響を確認し,行為者の意図が行為の対象に対する働きかけにある場合には行為の結果が意図性に影響しないことが明らかになった.この成果は中村(掲載予定,認知科学)で公刊予定である.また,道徳的判断の研究も同時に進め,使用言語の相違による判断過程の違いを検討し,第二言語で道徳判断を行うと第一言語のそれに比べて義務論的な判断が弱まることを確認した.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第一目的である確率の影響の追検討を行い、さらに因果構造の検討にも着手することができた.刺激文を変えた検討については今後の課題であるが,一方で量刑判断といった題材を使った判断実験を行っており,次年度以降の下準備は整っていると考えられる.また以上の研究は学会発表(Nakamura, 2014; 中村,2014)および学術論文(中村,掲載予定)の形で公表されており,順調に成果を挙げているものと評価できる.
|
Strategy for Future Research Activity |
因果構造の影響の検討とともに,他の刺激文を用いた検討を行うのが大きな目的である.加えて現時点では授業を利用したデータ収集にとどまっているため,webを利用した大規模なデータ収集および分析もあわせて行いたい.
|
Causes of Carryover |
研究の進展が思った以上に進んだ部分と進まなかった部分があったことが理由と考えられる.まず因果構造の影響の検討については想定以上のペースで進展し,経費削減につながった結果となった.逆に道徳的判断の部分については使用言語の相違という新たな側面が検討課題として現れたため,進行がやや遅れ,人件費等の執行に及ばなかったことが大きい.
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
より大規模なデータ収集のため,調査会社などとの連携を図ると同時に,データ分析のためのアシスタントの雇用,および分析のためのハードウェアの整備に経費をあてることを考えている.また,これまでは心理学系・認知科学系の国際学会への参加がメインであったが,哲学・社会科学系への学会への研究成果のアピールも合わせて検討していきたい.
|