2016 Fiscal Year Research-status Report
道徳、意図、確率、因果~不確実性と因果構造からみた道徳的判断の心理学モデルの構築
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26380853
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
中村 國則 成城大学, 社会イノベーション学部, 教授 (40572889)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 道徳的判断 / 意図性 / 思考プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
以下の知見を得た: (1)第2言語使用が意思決定・道徳的判断にどう影響するかを検討した.具体的には,様々な道徳的判断課題・意思決定課題を日本語・英語のどちらかで実験参加者に回答させ,判断傾向を言語間で比較した.その結果,英語で問題を呈示された場合の方が日本語で提示された場合よりも思考のバイアスが低減され,かつ功利主義的な反応が高まることが示された.この成果はNakamura (2016, Cog. Sci. Society)で国際学会で発表されている.
(2)意図性判断に関する研究成果を国際学会で発表すると同時に国際学術誌に投稿した.申請者はこれまで行為の意図性が結果から影響を受けるというKnobe 効果を確率の影響や因果構造の影響といった観点から検討してきたが、それらの研究成果をまとめたものをNakamura (2016, Psychonomic Society)で発表し,Nakamura (2017, under review)国際学術誌に投稿した.
(3)情報の価値という新たな問題に取り組んだ.具体的には,ある知識が自分が有しているか他人が有しているかで価値が異なるという所有効果が成立するかを検討し,前者の価値の方が後者の価値よりも高く評価されることを明らかにした.この成果は中村 (2016,認知科学会)で公表している.このような知見は,知識という,他者に伝達してもそれが自分の手元に残り,いわゆる競合性という性質を持たない財についても所有効果が成立することを示した点で興味深いものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
最終年度で研究成果のまとめをすることが出来たとともに,情報の価値という次の申請課題につながる新たな問題に着手することが出来た.当初の目標を達成すると同時に新たな研究上の課題に進展したと評価できるだろう.
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Strategy for Future Research Activity |
次の申請課題である”情報の価値”という問題と本研究課題との関連を考えてみたい.次の申請課題の主要な問題である”情報”は本申請課題で扱った確率の別の側面であり,ある意味では地震性課題は本研究課題の本質にもせまるテーマとなっているともいえる.そういった深みと広がりを意識し,研究を進めたい.
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Causes of Carryover |
本研究テーマである”道徳、意図、確率、因果”の確率の部分で新たな検討課題が生じ,その問題の整理・分析に時間を要し,期間延長となった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たな問題の検討や分析を迅速に進めるための人件費・設備の充実に充てたい.研究補助者を確保し.かつ新たなソフト導入で出来る限り早く課題を終了させたい.
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