2014 Fiscal Year Research-status Report
中小企業の経営革新を促進する従業員行動に関する心理学的研究
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26380854
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
高石 光一 亜細亜大学, 経営学部, 教授 (00350710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 和代(関口和代) 東京経済大学, 経営学部, 教授 (70350709)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 組織の戦略的柔軟性 / 創造的行動 / 経営革新 / 自律性 / 中小企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、本研究の目的である中小企業の経営革新の源泉としての組織行動の把握と、経営革新を促進する自発的で革新的な従業員行動の生起の過程と方策についての心理学的な探索を実施しました。科研費申請時での計画のとおり我が国を代表するイノベーティブな中堅製造業Aグループに加えて、堅実な経営を展開する中小企業B社からの全面的な調査協力のもと、本格的なヒアリング調査およびアンケート調査を実施することができました。特にA社は社員数700名を超えており、一般社員およびその上司による部下評価のデータのマッチングには相当な労力と時間が予想されましたが、お陰様で科研費によりシステムを作成することができ、上司・部下がPC上で質問項目に応える仕組み構築できました。これにより、経営革新に向けた組織行動の影響およびその規定因についての実証に向けたデータ収集とマッチングを効率的に推進し、また、高度な分析ができました。分析においては、マルチレベル分析を試行することもできました。 また、当初の予定通り国際学会(①国際ビジネス学会:Academy of International Business(カナダ,バンクーバー), Proceedings of the 56th Annual Meeting, Academy of International Business p.214, ②EAJS:European Association of Japanese Studies(スロベニア リュブリャナ),14th International Conference of European Association for Japanese Studies)に参加し、革新的行動についての研究発表を行いました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画のとおり、中堅・中小優良企業からの全面的協力を得てヒアリング調査を行うとともに、一般従業員からのセルフチェックによるデータ収集に加え、管理者・役員による部下への評価データが収集できました。これにより研究手法的にはCommon Method Varianceの問題をクリアし、欧米での組織行動研究等での研究報告や投稿審査に耐えうるレベルに達することができたと思います。今後の国際学会での研究報告や論文投稿を積極的に行えるデータが収集できました。また、日本でも最近注目されてきたマルチレベル分析のソフトであるHLM7(Hierarchical Linear Model)を入手し、その操作を修得できたことも大きな成果で、今後の個人、チーム、部署、会社等のレベル間にわたる要素の関係性を分析できるようになりました。一方、従前の分析方法(階層性を無視した要素間の回帰分析など)では、関係性がみられた理論が、マルチレベル分析を用いるとその関係性が検証できなくといった課題を抱えるようになりました。 このようなことから、従前の理論や手法を見直し、最新の書籍やジャーナルの収集をとおして、これまでの理論的考察を加えた新モデルの概念構築の方向が多少ですが見えてきました(後述「今後の研究の推進方策等」)。また、「研究実績の概要に記したとおり、2つの国際学会にて研究報告を行うことができ、多くの海外の研究者との意見交換ができました。 研究の内容としては、26年度に実施した調査からは、社員の創造的行動には仕事の自律性(Autonomy)がとりわけ重要であることが再確認できました。今後、この分野に係る一層の理論の精緻化と実証に努めます。 以上から、26年度の研究は順調に進展していると考えます。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のとおり国際学会での研究報告の審査を通過し、報告を行いましたが、その投稿や発表の過程の中で、匿名・非匿名の海外の研究者から私の研究の論理・方法上の課題点を指摘され、これは今後の研究推進上の大きなヒントになりました。 今後の研究内容としては、創造的行動を促進する要因として、社員自身の顧客や後工程の者など他者への志向性(Other orientation)の強さ、社員のサイコロジカル セイフティ(Psychological safety)、自分の仕事・パフォーマンスによる受益者への任認(Beneficiary contact)などの影響過程とともに、創造的行動を阻害する要因として管理者の改革への抵抗(resistance to change)等の要因についても理論に組み入れ、社員の自発的で創造的な行動についての研究を体系化するよう努めます。そのため、27年度には、新たな調査に着手したく考えています。 また、26年度に収集したデータ分析からは、これまでの私の経営革新促進行動に関する研究フレームワークにおいて重視してきた管理者の変革型リーダーシップ(transformational leadership)への影響力は、創造的行動に対して同程度の影響を与えないことが見受けられています。これについても理論的かつ方法論的な検討を加え、包括的な創造的行動のメカニズムの解明に努めます。我が国中小企業のイノベーションに寄与できる成果を目指します。
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