2015 Fiscal Year Research-status Report
中小企業の経営革新を促進する従業員行動に関する心理学的研究
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26380854
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Research Institution | Asia University |
Principal Investigator |
高石 光一 亜細亜大学, 経営学部, 教授 (00350710)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野口 和代 (関口和代) 東京経済大学, 経営学部, 教授 (70350709)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 組織の戦略的柔軟性 / プロアクティブ行動 / 経営革新 / 中小企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、主にこれまでに調査研究を実施した内容をとりまとめ、学会での報告および論文投稿に注力しました。 ①平成26年度に56th Annual Meeting, Academy of International Business(Vancouver, CANADA)で学会報告した内容を査読付き論文として海外ジャーナルである、Journal of Business and Economicsに投稿し採択されました(2016 in press)。②経営革新を促進する行動であるプロアクティブ行動の尺度について、共同研究としてとりまとめ、査読付きの国内論文として掲載されました(産業・組織心理学研究 29,2, 59-72, 2016)。③平成26年度にA社で行った調査データをもとに、産業・組織心理学会人事部門での共同報告を行い、その内容は学会誌に掲載されました(産業・組織心理学研究 29,2,139-148, 2016) また、平成26年度にA社で行ったアンケートおよびヒアリング調査の分析を通して、これまでの研究フレームワークとは異なる新たなメカニズムが経営革新行動を影響することが示唆されたことから、これまでの研究フレームワームを再構築し、探索的なプレサーベイを行いました(独立および下請け中小企業に働く従業員400人を対象とした調査)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
科研費申請時の目的として掲げた、中小企業の経営革新の源泉としての組織行動の把握については、理論および実証研究を通して理解が深まったと思量します。経営革新には、従業員の支援行動や役割内行動を越えた創造的行動(革新的行動)の発揮を中心とした顧客優先行動、問題解決行動等がクリティカルであることが検証できました。また、それらの行動の発揮には、職務自律性および変革型リーダーシップが大きな説明力をもつことが実証できました。とりわけ、従前は単一概念として認識されてきた職務自律性について、自律性を構成する要素に分解し、それらの影響力について解明しました。またリーダーの変革型リーダーシップは、リーダー自身が示す革新的行動に比べて非常に影響力をもつことも確認できました。これも含めてミドルレベルの従業員が、部下の革新的行動に及ぼすポジティブおよびネガティブな影響力を解明することができました。 本研究では当初から予定していたHLMによるマルチレベル分析を実際に活用した結果、従業員個人の発揮する革新的行動は、個人要因に比べてチームリーダーレベルの影響を強く受けることが検証できました。 また、アンケートやヒアリング調査から下記の新たな重要な知見が得られました。これらを今後の研究につなげていきたく考えます。 ①イノベーティブな企業であることと、従業員全員が革新的行動をとることは必ずしも一致しない。 ②イノベーティブな企業として知られる企業には、社員個々のイノベーション行動よりも行動規範を厳守することを最優先する側面、個人の革新性・創造性以上にチームの結束力や情報交換力を重視、さらにイノベーション以前に社員が心理的に安心して働ける環境を保持できていることが前提である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度には、これまでの研究成果を下記により国内外で報告する予定です。また、前述(現在までの進捗状況)のように、これまでの研究から、中小企業における経営革新生起のメカニズムを新たな視点で説明できることの手がかりが得られたことから、28年度はそのモデル化に取り組み、29年以降もその検証に注力したく思います。 28年度の研究報告予定 ①Takaishi, K. & Sekiguchi K. (2017). Effects of Different Facets of Work Autonomy and Proactive Personality on Innovative Behavior. 31st International Congress of Psychology 2016 (ICP 2016), Yokohama JAPAN July, 24-29, 2016 ②高石光一・関口和代・太田さつき・鈴木賞子(2017) 変革型リーダーシップ、上司の革新的行動、および組織の経営革新支援が部下の革新的行動に及ぼす影響に関するマルチレベル分析 産業・組織心理学会第2回大会 立教大学 2016年9月3-4日。 28年度以降の研究内容:これまで構築したモデルに加えて、以下を経営革新促進行動の説明要因としてモデル化し、その検証を試み、その成果を国内外に発信していきたく思います。 組織要因(サイコロジカルセイフティ:心理的安心)、リーダー要因(リーダーの変化への抵抗、リーダーの受容性)、チーム要因(チーム内の結束力・情報交換力)、個人要因(目標志向性)他
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Causes of Carryover |
注文していた海外文献が廃版となり、入手が不可能となった旨の連絡が年度末に来ました。そのため余剰金が発生してしまいました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に近距離等の旅費、または事務費として支出させていただきます。
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Research Products
(5 results)