2015 Fiscal Year Research-status Report
近隣国との関係改善のための非意識指標による直接接触研究とサーベイ調査研究の融合
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26380857
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
潮村 公弘 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (20250649)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化的ステレオタイプ / 交流意識 / 多民族 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年度においては、日本国内において2014年6月・7月(1次調査)と2014年11月末(2次調査)の2回にわたって同一の質問紙を用いて実施したパネル調査研究のデータ分析と考察を主として進めた。(また韓国においても1回のみの調査実施ではあったものの同等の調査研究を実施した。)2015年度中に、2014年度に日本国内で実施したパネル調査に関して、学術論文化をおおむね完了した。 本調査研究の目的は、近隣国である韓国・中国に対して日本人女子大学生がもつ「交流欲求」と「国民イメージ」との間の因果関係を明らかにすることである。具体的には、同一質問紙の調査票調査を同一回答者に対して2回行うパネル調査を実施し、分析においては交差遅れ効果モデルと同時効果モデルによる因果関係の探究を行った。 基礎統計量、(対応のある)分散分析による検討の結果、日本人女子大学生は中国より韓国に対して高い交流欲求および好意的なイメージをいだいていることが認められた。韓国に対する評価は韓流ブームをきっかけにメディアを通じて肯定的な韓国イメージと頻繁に接したことが原因であると考えられた。また、交差遅れ効果モデルと同時効果モデルによる分析から、韓国、中国との「交流欲求」が原因となって、対韓国人・対中国人の「国民イメージ」(親和性イメージ、信頼性イメージともに)に影響を及ぼしているという因果関係が、一貫して明瞭に認められた。 この結果は新規な知見であると言える。またこの結果は、メディアなどによる接触が増えることで交流欲求が刺激されることによって、相手国へのイメージが良好なものに改善されるようになるという方策の有用性を示唆する。本研究の知見を踏まえて、国民イメージの改善、そして偏見を低減する対策について接触仮説に基づいて議論した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、平成26年度あるいは平成27年度において、外注するサーベイ調査を予定していたが、大がかりな調査となるサーベイ調査の実施に先立って、複眼的な調査研究を実施しておくことが有用であると判断したことから、サーベイ調査を先送りすることとしたため、この点においてはやや遅れていると言える。しかしその一方で調査研究については、日本国内での調査においてのみならず、韓国国内での調査においても、「パネル調査」設計としての実施形態を満たした上で計画を進めて来ており、この点では、当初の計画以上に研究は進展していると言うことができる。 それゆえ、トータルでの現在までの達成度としては、「おおむね順調に進展している」という判断が適当と考えられる。 加えて、「同一対象者に対する2時点にわたるパネル調査型」の調査として、新たなリサーチ・クエスチョンを取り上げた「パネル調査型」調査研究が実施準備状態に入っており、さらなる進展を含んだ調査研究を計画中であり、研究開始3年目には、より多面的な調査研究を実施することができる見込みとなっていることから、今後は、当初の研究計画において設定した探究テーマをさらに進展させた研究を推し進めていける見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の近々の研究推進方策は以下の通りである。まず、「パネル調査型」の調査研究について、2016年度に新しいリサーチ・クエスチョンに基づいた調査研究を遂行する予定を立てており、すでに調査実施の準備は整いつつある状況である。 そのさい日本国内の複数の大学において調査を実施するとともに、韓国国内でのパネル調査型調査も実施することを予定している。(2015年度においては、韓国国内で1回のみの横断型調査研究を実施するにとどまったものの)2016年度の調査においては、韓国国内でのパネル調査型調査の実施について、コラボレーター(研究協力者/共同研究者)から、実施についての内諾を得ている。 韓国語版調査票については、バックトランズレーション法による韓国語調査票をおおむね完成ずみであり、2016年度はじめに最終確認作業を行って、日本語版調査票と言語・文化的に可能な限り同等と考えられる韓国語版調査票を完成させた上で、調査研究を遂行できるようにする。 さらには、これらの調査研究で得られた知見をもとにした上で、直接接触効果検証型の実験的研究を遂行する予定である。直接接触効果パラダイムの中でも「想像型接触(imagined contact)」技法を取り上げた実験研究を遂行することを通して、どのような異文化接触のあり方が、近隣国との関係改善に有効な方法であると考えられるのかについて実証的に検証していく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初、外注するサーベイ調査を研究プロジェクト開始初年度に予定していたが、大がかりな調査となるサーベイ調査の実施に先立って、複数の複眼的な調査研究を実施しておくことが有用であるとの判断から、外注のサーベイ調査を初年度に実施しなかったことにより、今回の次年度使用額が生じてきている。また研究開始初年度に参加した国際学会において、調査研究の主たるパラダイムは、「同一対象者に対して調査を複数回実施することで因果関係を探求するパネル調査」に大きく軸足を移してきていることを認識し、そのことも、パネル調査の実施のほうを重視する理由となっている。 今後は、当初の研究目的を遂行していく上で、どのようなパラダイムの採用が最も望ましいと考えられるのかという俯瞰的な観点に立って、調査設計/調査実施パラダイムを検討していく予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究開始3年目には、(国内学会での学会発表に加えて、)主として研究開始2年目に遂行してきた調査研究プロジェクトの成果発表を、2つの国際学会において発表することを計画しており、そのための費用が必要となる。加えて、研究開始3年目には、海外における複数回にわたるパネル調査型の調査研究の実施も計画しており、その実査のための費用が研究遂行費として必要となる見込みであることから、次年度使用額はこれらの費用に充当する計画を立てている。
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Research Products
(2 results)