2016 Fiscal Year Research-status Report
近隣国との関係改善のための非意識指標による直接接触研究とサーベイ調査研究の融合
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26380857
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
潮村 公弘 フェリス女学院大学, 文学部, 教授 (20250649)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 文化的ステレオタイプ / 交流意識 / 多民族 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度には、2つの研究成果発表と、3つの実証研究の遂行を実施することができた。 まず、2014年度に実施した「パネル調査型」調査研究では、韓国・中国に対していだいている民族イメージと文化交流期待のどちらが先行する要因であるのかを探ることを目的として調査がなされ、分析の結果、文化交流期待が民族イメージに対して影響を与えているという関係が明らかとなった。その一方で、民族イメージによって文化交流期待が決まるという反対方向の影響関係は示されなかった。 次に、2015年度に実施した「パネル調査型」調査研究の成果は次の通りである。まず韓国に対する肯定的イメージ、韓国人の親和性・信頼性が、「他国民・他民族に対する感情」に正の影響を与えることが確認できた。一方、「他国民・他民族に対する感情」は中国人の親和性に正の影響を与えることが見出された。 両調査結果を合わせて考えると、2014年の調査から韓国人・中国人との交流意図が韓国人・中国人イメージに影響を与えることが明らかになり、加えて、2015年の調査では韓国に対するイメージと中国に対するイメージの因果モデルが異なることが認められ、これは、対象とする国によって有効な政策が異なることを示唆している。 また、2016年度に遂行した実証研究の概要については以下の通りである。調査研究については、日本国内の複数の大学において「パネル調査型」の調査を遂行したとともに、韓国国内でも「パネル調査型」調査を遂行することができた(2015年度においては、韓国国内では1回のみの横断型調査研究を実施するにとどまっていた)。加えて、潜在的態度測定指標を用いた、直接接触効果検証のための実験研究(直接接触効果パラダイムの中でも「想像型接触」技法を取り上げた)を比較的大規模な形で遂行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、研究プロジェクトの比較的早期の段階で、サーベイ調査を予定していたが、サーベイ調査の実施に先立って、複眼的な調査研究を実施しておくことが有用であると判断したことから、サーベイ調査を先送りすることとしたため、この点においてはやや遅れていると言える。しかしその一方で調査研究については、日本国内での調査のみならず、韓国国内での調査においても、「パネル調査」設計としての実施形態を満たした調査研究を進めて来ており、また潜在的態度指標を用いた「想像型接触」技法についての実験研究も比較的大規模な形で実施することができた。これらの点では、当初の計画以上に研究は進展していると言うことができる。 それゆえ、トータルでの現在までの達成度としては、「おおむね順調に進展している」という判断が適当と考えられる。 加えて、さらなる進展を含んだ調査研究についても計画中であり、2017年度には、より多面的な研究を実施することができる見込みとなっている。このことから、今後は、当初の研究計画において設定した探究テーマをさらに進展させた研究を進めていける見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策としては、まず、2016年度中に実施した3つの実証研究(2つの「パネル調査型」調査と、「想像型接触」技法に関する実験研究)について、その分析を進め、結果を確定していくとともに、その成果を学会発表や論文執筆の形で発表していく。3つの実証研究とは具体的には、1)日本国内の複数の大学において実施した「パネル調査型」調査、2)韓国国内において実施した「パネル調査型」調査、3)「想像型接触」技法の効果検証のための実験研究である。特に3)の実験研究については、直接接触効果パラダイムの中の「想像型接触」技法について「潜在的態度測定手法」を採用した先駆的な実験研究であり、かつ実験研究を比較的大規模な形で遂行することができた研究であることから、分析結果の検討に時間を割いて行く予定である。 また、2017年度中には、比較文化的視点に立ったアメリカ国内での調査研究を視野に入れて研究プロジェクトを推進していく。加えて、これまでの個々の実証研究をまとめる作業を進めていく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初、サーベイ調査を研究プロジェクトの早い段階で実施することを予定していたが、サーベイ調査の実施に先立って、複数の複眼的な調査研究を実施しておくことが有用であるとの判断から、サーベイ調査を実施してこなかったことにより、次年度使用額が生じてきている。また研究開始初年度に参加した国際学会において、調査研究の主たるパラダイムは、「同一対象者に対して調査を複数回実施することで因果関係を探求するパネル調査」に大きく軸足を移してきていることを認識し、そのことも、パネル調査の実施のほうを重視する理由となっている。 今後、当初の研究目的を遂行していく上で、どのようなパラダイムの採用が最も望ましいと考えられるのかという俯瞰的な観点に立って、調査設計/調査実施パラダイムを検討していく予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度には、主として2016年度に遂行してきた実証研究の成果を、学会大会において発表することを予定しており、そのための費用が必要となる。加えて、海外における追加的調査研究の実施(実査)を視野に入れており、その実査準備と実査のための費用が研究遂行費として必要となる見込みであることから、次年度使用額はこれらの費用に充当する計画を立てている。
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Research Products
(2 results)