2014 Fiscal Year Research-status Report
がんリスク・コミュニケーションモデルの医療現場における臨床研究
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26380860
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
金川 智惠 追手門学院大学, 経営学部, 教授 (70194884)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹西 亜古 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 教授 (20289010)
竹西 正典 京都光華女子大学, 健康科学部, 教授 (60216926)
古河 洋 近畿大学, 医学部, 教授 (80513118)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | がんリスクコミュニケーション / 配慮性欲求 / 事実性欲求 / がん患者 / チーム医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、医療現場のコミュニケーションの問題に関し、医者への依存度が高い従来型のインフォームドコンセントから、チーム医療という臨床現場の現状に即した、がんリスク・コミュニケーションという新たなコミュニケーションモデルを提唱し、① 患者が個人の理解力の範囲において、病状と治療に関する理解を最大化し、② 医療者との相互作用によって患者の不安や心配を最小化できる、がんリスクコミュニケーションのメカニズムを明らかにすることである。 平成26年度の実績:がん患者心理モデルの精緻化の実現 平成26年度では、2012年度に実施した予備調査の結果の精査、及び医療関係者からのヒアリングによる、患者の問題のより詳細な探索を実施した。その結果、予備調査時に設計した、がんリスク・コミュニケーションの「事実性・配慮性並列2基準モデル」に新たな視点を導入する必要性が明らかになった。当初は、最終目的関数である、「患者の治療過程満足度」に、①患者の病状・治療理解を最大化させる事実性コミュニケーションと②患者の不安・心配を最小化できる配慮性コミュニケーションが同等の規定力を持つと想定していた(並列モデル)。しかし病状や治療に対する患者の不安や心配は、病状や治療の理解力の阻害要因となること、それ故、話を聞ける状態を提供することが患者に寄り添ったがんリスクコミュニケーションの効果性を高めることになることが上記26年度の研究で明らかになった。 この知見に基づき、先ず患者の配慮性欲求が充足されることが基盤で、その上で事実性欲求が充足されることが治療プロセスへの積極参加や満足度を喚起するという、新たなモデル「事実性・配慮性重層化2基モデル」を構築し、その実証に取り組んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に研究計画の変更を行い、当初27年度に予定していた大規模調査を26年度に実施することとした。その方法は調査会社によるWEB調査である。研究を計画した当初は、調査対象者が、がん患者およびその家族という特殊性から、大規模なサンプリングによるweb調査は難しいと想定し、調査方法として考慮していなかった。しかし研究会を重ねるうちに、この分野に実績のある調査会社との知己を得、大規模調査が可能になった。従ってこの研究計画の変更は、研究のより充実化をもたらすものである。 大規模調査のための慎重な調査計画、スクリーニングの難しさにより、調査実施は平成27年度にずれこんだが、Web調査で、患者とその家族のデータを全国規模で大規模にサンプリングできるため、研究成果として得られる知見は拡大することが期待される。従って、本研究の達成はおおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は大規模調査の結果をもとに、医療現場用「がん患者の事実性・配慮性欲求測定尺度」を構築することを主目的とする。 本研究の目的は、がん患者の心理過程を、「事実性・配慮性重層2基準モデル」に明らかにすること、およびこの知見を基に、患者の個人特性に適合したがんリスクコミュニケーションの具体的実践を可能にする、医療現場で使える患者の個人差検出測度を開発することである。 前者の目的は大規模調査で検討し、後者については、平成27年度の後半に、患者の個人差を、事実性欲求・配慮性欲求の高低により検出可能な測定ツール、即ち、「がん患者の事実性・配慮性欲求測定尺度」を開発する。この目的のため、先ず、この測度の標準化を目指す。調査対象者はがん患者200名(患者の会に調査を依頼)および、比較対象のための大学生200名とし、測度の信頼性と妥当性を検討する。 また、当初26年度に実施予定であった事実性欲求と配慮性欲求の共変関係について、両者間の負の共変関係を検証する。
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Causes of Carryover |
当初の研究計画では先ずがん患者の小規模調査を行い、後年度に患者の個人差タイプに即応したがんリスクコミュニケーションを可能にする、個人差検出測度(配慮性欲求・事実性欲求測度)の構築を大規模調査により行う予定であった。しかし研究過程で、1.リスク関連調査に精通した調査会社と研究協力体制を築くことができ、2.これにより、モニタリングで調査対象者が、がん患者のみならず、その家族、近親者等の関係者にまで拡大可能になり、3.その結果、「がんリスク・コミュニケーションモデル」の検証を平成26年度から大規模調査で行うことが可能になった。 しかし調査対象者ががん患者及びその家族であるため、スクリーニングに時間を要していること、項目作成についても慎重な検討が必要なことから実施が27年度にずれ込む結果となった。このためこの分の予算執行が未遂である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現時点で、上記の問題はほとんど解決を見たので、調査会社と契約の後、調査の実施に入る予定である。この使用額は従って、当初の予定通り、大規模調査のために充てる。
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