2014 Fiscal Year Research-status Report
自動的な対人認知の発達に関する比較文化モデルの構築-日米の違いの検討ー
Project/Area Number |
26380868
|
Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
清水 由紀 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (30377006)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 対人認知 / 特性推論 / 自動的過程 / 比較文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本プロジェクトは,意図せず,自動的・自発的に,他者の行動から特性を推論する自発的特性推論(Spontaneous Trait Inference; STI)の発達に関して,比較文化的検討を行うことである。初年度であるH26年度は,日本人とアメリカ人の大学生を対象とした2つの実験を行った。 実験1では,63名の日本人大学生と59名のアメリカ人大学生を対象とした。誤再認パラダイムを用いた手続きにより,特性を暗示した行動記述文から特性を自発的に推論する程度を調べた。PDP(Process Dissociation Procedure)分析により,STIの生起を自動的過程と統制的過程に分離した結果,日本人とアメリカ人のいずれにおいてもSTIは生じるが,アメリカ人の方がより自動的過程に依存していることが示唆された。 実験2においては,アメリカ人グループを,さらにヨーロッパ系アメリカ人とアジア系アメリカ人に分けてサンプリングした。また,特性が推論されやすい刺激(行動を記述する2文)を用いた。対象は,50名の日本人,60名のヨーロッパ系アメリカ人,58名のアジア系アメリカ人であった。実験2の結果は,実験1を追認するものであった。すなわち,2つのアメリカ人グループにおいて,より自動的過程に依存したSTIが生起していた。 以上の結果より,日本人とアメリカ人のいずれにおいてもSTIが生起するが,アメリカ人の方がより自動的過程に依存していること,またアメリカ人のサブグループ間の違いは見られないことが示唆された。STIの生起はuniversalであるが,その生起プロセスにはculture-spesificな特徴が見られると考えられる。 なお,小学5年生も対象とした実験を行う予定であったが,参加者の確保が難しくH26年度には行えなかった。H27年度に実施予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り,日本人とアメリカ人を対象としてデータを収集し,また分析も完了した。 論文執筆にも取り掛かり,またH27年度の実験用の材料を作成した点においては,計画以上の進展が見られたと言える。 しかし,計画にあった小学5年生を対象としたデータ収集については,H27年度に持ち越しとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
日本だけでなく,アメリカでのデータ収集も順調に進んでいる。ただしリサーチアシスタントの大学院生が,カナダの大学に進学したため,今後はアメリカ人の代わりにヨーロッパ系カナダ人を対象とした実験を行う予定である。この点については,先行研究より,ヨーロッパ系アメリカ人とヨーロッパ系カナダ人は同様の傾向を示すことが報告されていることから,問題ないと考えられる。 カナダ人の小学5年生の参加者の確保が最大の課題であるが,現在共同研究者との打ち合わせを行い,実験実施の目途が立ちつつある。
|
Causes of Carryover |
端数の余りが出たため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品購入に充てる。
|