2015 Fiscal Year Research-status Report
自動的な対人認知の発達に関する比較文化モデルの構築-日米の違いの検討ー
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26380868
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
清水 由紀 埼玉大学, 教育学部, 准教授 (30377006)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 自発的特性推論 / 対人認知 / 自動的過程 / 比較文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
欧米人は行動の原因を特性など人の内的要因に,東アジアの人々は状況などの要因に帰属しやすいことが先行研究で示されている。そこで,このような帰属の文化差がimplicitで自動的な推論においても現れるのかについて検討した。 ・予備調査の実施:行動と状況のいずれも暗示している刺激分を選出するため,日本人大学生20名とアメリカ人大学生37名を対象とした予備調査を実施した。73の行動記述分から40文を選出し,刺激として用いた。 ・本実験:再学習パラダイムを用いて,自発的特性推論・自発的状況推論の文化差について検討した。132名のヨーロッパ系カナダ人大学生と,124名の日本人大学生を対象とし,特性と状況のいずれも暗示している行動文から自発的に特性または状況を推論する傾向について調べた。まず接触フェイズにて行動文と写真(顔写真+状況写真)を40ペア提示した。その後,アナグラム課題のフィラータスクをはさみ,学習フェイズにて特性語もしくは状況語と顔写真のペアを40ペア提示した。さらにフィラータスクを行ってもらった後,最後に再生フェイズにて顔写真のみを提示し,学習フェイズで各写真とペアになっていた単語を思い出して再生してもらった。 分析の結果,日本人とカナダ人のいずれにおいても,自発的特性推論と自発的状況推論が生起したが,日本人においてはその2つの推論の生起頻度が同程度であるのに対し,カナダ人においては自発的特性推論の方が生起頻度が高かった。すなわち,カナダ人の方が特性に帰属しやすいという傾向がimplicitなプロセスでも見られた。 本研究成果を論文としてまとめ,国際雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
共同研究者がアメリカの大学からカナダの大学へと異動したため,対象がアメリカ人ではなくカナダ人となった。ただし,先行研究ではアメリカとカナダは北米としてひとくくりにされることが多く,またヨーロッパ系カナダ人のみを対象としたため,計画通りの研究実施に支障は生じない。 小学5年生のデータ収集は,カナダ人(もしくはアメリカ人)を対象にリクルートを進めている。27年度中のデータ収集はできなかったが,28年度中には収集できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで日本と北米におけるデータ収集は順調に進み,また論文の作成・投稿も並行して行っている。今後は,小学5年生のデータ収集に焦点化し,最終的に自動的な特性推論の発達の比較文化モデルを構築する。
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Causes of Carryover |
実験参加者への謝金,調査結果報告書の郵送料において,当初の予定よりも低く抑えられたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度繰り越し分は,論文投稿の際の英文校正が文字数が多く予定よりも多くかかるため,それに充てる。その他の事項は交付申請のとおりに使用する。
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