2015 Fiscal Year Research-status Report
子どもの思考の多様性を生かす教科学習に関する心理学的研究
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26380871
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤村 宣之 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (20270861)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教育系心理学 / 思考 / 概念的理解 / 多様性 / 教科学習 / 概念変化 / 協同過程 / 探究学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,子どもの思考の多様性の様相を記述型調査等により明らかにするとともに,子どもの思考の多様性を生かす教科学習を複数教科で組織し,それが各児童・生徒の概念的理解の深化に及ぼす効果とプロセスを心理学的方法により明らかにする。平成27年度は以下の研究を実施した。 1.子どもの思考の多様性の様相に関する記述型調査:中学生・高校生を対象に数学的リテラシーに関する非定型的記述課題を継続的に実施した。記述内容の分析の結果,一定期間の学習の前後で概念的理解の水準間の移行がみられることが明らかになった。 2.思考の多様性を生かす理科授業の組織と評価:実験計画と結果の考察において思考の多様性を引き出す理科授業を組織し,そのプロセスを個人が記入したワークシートにもとづいて検討した。単元導入時に記述した実験計画と単元終結時に発展的課題として記述した実験計画の対比,実験直後に記述した考察とクラス全体での協同探究を経て記述した考察の対比が,個人の概念的理解の評価に有効性をもつことが示唆された。 3.思考の多様性を生かす数学授業の組織と評価:多様な既有知識を活性化する非定型的課題の設定と個別―協同―個別の探究過程を特徴とする授業(協同的探究学習)を組織し,授業時の発話とワークシートをもとにプロセスを検討した。複数単元で検討を行った結果,導入時の非定型的課題に先立ち各生徒が自由に規則や解を探索する前提課題を短時間で実施することが多様な思考(解法や説明)の導出やその後の協同探究における多様な思考の関連づけに有効に機能することが示された。 4.思考の多様性を引き出す授業の多面的検討:フィンランドや日本国内で思考力の育成を重視する複数の学校の授業過程を観察した結果,様々な日常的事象を関連づける本質的課題の設定や発達課題の考慮などが,子どもの思考の多様性を引き出すうえで重要であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度において,記述型調査や授業観察,発話や記述内容の分析といった心理学的方法を用いて,子どもの思考の多様性とそれを促進する要因を明らかにする研究が進められたため。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度以降は,平成27年度からの継続的研究として,子どもの思考の多様性を引き出す教科学習を複数教科において組織し,記述型調査や発話分析などの心理学的方法により,その教科学習が子どもの概念的理解の深まり,思考プロセスの表現などに及ぼす効果とプロセスを継続的に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度において実施予定であった記述型調査等の一部が,研究協力校の事情等により平成28年度以降の実施となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度以降の記述型調査等の実施および分析のために使用する予定である。
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Research Products
(2 results)