2014 Fiscal Year Research-status Report
児童・青年期のモラル・アイデンティティの発達に関する実証的研究
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26380872
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
松尾 直博 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (10302902)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モラル・アイデンティティ / 道徳教育 / 質問紙 / 道徳性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.モラル・アイデンティティ研究についての情報収集 モラル・アイデンティティ研究についての国内外の情報収集を行った。海外の動向については、Association for Moral Educationの年次大会に参加し、様々な研究者と意見交換を行い、最新の動向について情報を得た。国内については、平成30年度(2018年度)より、新たに「特別な教科 道徳」(道徳科)が設置されることとなり、その方向性や新しい学習指導要領案などについて情報を収集すると共に検討を行った。このような国内外の最新情報を収集した結果、モラル・アイデンティティ研究を今後日本で行われる道徳教育、道徳科の授業で活用するための研究を行うという、発展的な目標も検討していきたいという発想に至っている。急速に発展中のモラル・アイデンティティ研究について、多くの情報を収集することができ、整理立てて検討することができた。 2.モラル・アイデンティティを把握するための手法の開発 開発者からValues Embedded in Narrative(VEiN)を入手し、日本語版を作成した。マニュアルに基づき、複数人の評定者のトレーニングを行い、コーディングの信頼性を高めた。先行研究に基づき、161名の日本の大学生に対して質問紙を実施し、その回答をVEiNで分類した。結果を北米で行われた先行研究と比較したところ、かなりの部分で共通性が見られたが、一部、先行研究とは異なることが明らかになった。モラル・アイデンティティの測定につながる基礎的な分析であるが、VEiNを日本に適用した研究はないと思われ、貴重なデータが得られたと思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モラル・アイデンティティ研究に関する国内外の最新の情報を収集することができ、理論的な整理や方法論の把握ができたことは、十分な成果と言えよう。ちょうど日本では、道徳の教科化の方向性が定まり、学習指導要領案が出されたこともあり、今後の日本の道徳教育に貢献できる可能性がある。また、VEiNコーディング・マニュアルの翻訳を行い、日本語版を作成できたことも、当初予定していたとおりの進行であると言える。先行研究を基に質問紙を作成し、得られた自由記述形式の回答について、VEiNの日本語版を用いて、価値の分類も行えている。予備的な分析で、既に北米で行われた研究との異同を見いだせており、成果が上がっている。当初予定していた自己記述式の評定尺度については、理論的に再検討する必要があると思われたため、現時点では作成には至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
VEiNを用いて、価値の分類を行う研究を小学生、中学生、高校生などの児童生徒にも適用していく。質問紙の設問などを工夫して、可能な限り、子どもや青年のモラル・アイデンティティの発達の様相を検討できるようにしていきたいと考えている。また、自己記述式の評定尺度についは先行研究を基に、独自の尺度の開発を行っていく予定である。モラル・アイデンティティの発達を促す教育について、道徳の時間の授業(道徳科の授業)や教育活動全体で行う道徳教育(ボランティアなどを含む)の両方に焦点を当て、観察、面接、質問紙などを組み合わせて測定を行い、よりよい教育のあり方について検討を行っていく。得られた成果については、国際学会などで発表していく予定である。
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