2014 Fiscal Year Research-status Report
中学校のスポーツ指導に関する文化心理学的アプローチ
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26380876
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
尾見 康博 山梨大学, 総合研究部, 教授 (20264575)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | スポーツ指導 / 文化 / コーチング |
Outline of Annual Research Achievements |
海外における中学生に対するスポーツ指導やその社会制度的背景を文化心理学的観点から明らかにするため,1)アメリカの中学生女子バスケットボールのコーチと日本の元世界選手権メダリストを交えたシンポジウム「個性を育てるスポーツ指導」を企画,実施し,2)フランスにおける中学生とその保護者,及びサッカーと柔道のコーチを対象とするインタビュー調査を実施した。 その結果は以下のとおりである。 1.アメリカでの学校スポーツは集中的に2ヶ月程度実施され,トライアウトに合格しないとメンバーになれないことも多い。近隣での学校対抗の試合も実施される。2.フランスの学校スポーツは水曜午後に行われることが多く,学校対抗の試合はほとんどない。3.アメリカもフランスも,日本の部活動とは異なり,それぞれのスポーツの素養がない者がコーチをすることはない。4.アメリカもフランスも,一回あたりの練習時間は長くても二時間程度であり,コーチが怒鳴ったりすることもなく,一見すると緊張感がない。5.アメリカ人やフランス人のコーチから見ると,日本人のコーチは選手に対してプレッシャーをかけすぎであり,また,保護者もそれを望んでいることが驚きである。6.アメリカもフランスも,学校ではなく地域のクラブスポーツが盛んであり,同時に複数のスポーツを習うこともある。 以上を踏まえ,さらにデータを蓄積し,日本の部活動がどこまで特異であるかを確認するとともに,部活動を支える社会文化的背景をさらに探究する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定をしていた国内調査は,日程の調整が不調に終わり実施できなかったが,そのかわり,アメリカのバスケットボールコーチや日本人の元陸上選手(世界選手権メダリスト)をパネリストとするシンポジウムを開催し,日本やアメリカにおける中学生スポーツにかんする貴重な情報を得ることができた。また,年度末には当初予定していなかったフランスでの調査も実施できた。特にフランスでは,中学生,保護者,コーチのそれぞれにインタビューができ,かつ,練習だけでなく公式戦まで観戦したことにより,指導法だけでなく,一般レベルから全国クラスまでのスポーツ制度について貴重な資料を得ることができた。これらによって,スポーツ指導の具体的な方法や中学生スポーツを取り巻く社会制度的環境について,日本の部活動の特殊性が具体的なレベルで徐々に明瞭になってきたため。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度以降,調査対象国をヨーロッパ及びアジアのいくつかの国に増やし,また,日本国内の実態もできるだけ現場レベルで把握する。それとともに,日本も含めた調査対象国の中学生スポーツに関する歴史的資料も収集し,部活動に関する特殊性を明確にする。そのことによって,日本の中学生のスポーツ環境の改善に向けた現実的な提案をするとともに,動機づけなどに関する教育心理学理論や集団主義/個人主義に関する社会心理学的理論への貢献も目指す。
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