2016 Fiscal Year Research-status Report
教職への意思決定における内的ワーキングモデル理論の構築-社会心理学視点も加えて-
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26380880
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
若松 養亮 滋賀大学, 教育学部, 教授 (50273389)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 教職志望 / 意思決定 / 適性評価 / 大学生 / 教育実習 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究の第1の柱である学部3年次生に対する量的調査は2016年11月29日に行われ、200名の有効回答を得た。うち1年次のデータとのマッチングが可能なデータは161名であった。 2016年度の研究では、本計画の中心的な変数である内的ワーキング・モデル(以下、IWM)の尺度を改訂した22項目版を用い、因子分析の結果「Ⅰ.同僚への信頼」「Ⅱ.自身の資質への信頼」「Ⅲ.教職への不信」「Ⅳ.教え方と子どもへの信頼」の4因子を得た。また併せて尋ねた教育実習における欲求充足の尺度では、「①教師との関係形成」「②成長・達成」「③子どもとの関係形成」「④授業の成功」の4因子を得た。教育実習前後での志望度上昇・下降と有意な関連が見られたのはこのうちⅡとⅢ、①~③で、特にⅢと②における差が大きかった。 第2の柱である学部4年次生に対する面接調査は、2017年2月から3月にかけて行われた。教職志望に対し、学生生活を通して揺らぎがあった学生をリクルートし、計15名の学生に聞き取りを行った。 本研究計画で着目しているIWMが適用できる機序は、「子どもへの愛着」(IWMでは他者信頼にあたる)、「手応えの予期」(同・自己信頼と他者信頼)、「力量の不足と過重な負担」(同・自己と職業への不信)などが見いだされたが、IWM以外の枠組みが必要と解される機序も複数見られた。一般に学生たちは、教職の実際や実践と結びつきにくい授業を多く受ける1~2年次に教職にこだわらない路を模索する。しかし多くは教育実習を経て、授業をつくった手応えや子どもとの触れ合いで得られた快を“報酬”として、また実習先での指導教員をモデルとしながら、膨大で困難とされる教師の仕事を「目指す」という意思決定ができる。大筋でIWMに適合するが、その形成・深化の過程に課題を残している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画された調査は予定通り遂行できているが、データから明らかにできた部分が当初の想定どおりではなく、補助的な調査を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画にしたがって、2017年度には4年次生への量的調査を行う。そのうえで、縦断調査としてつみあげてきた4年分のデータを分析し、教職の志望・非志望にいたるメカニズムを明らかにする。 今年度は最終年度であることから、内的ワーキング・モデルの有効性と限界を明らかにし、昨年度の研究で課題となった自己・他者・職業への「信頼」の形成過程に迫るために、量的・質的調査を加えて、総合的に考察を行いたい。
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Causes of Carryover |
研究計画は遂行したが、使い切れなかった端数が残ったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度に、研究課題に照らして適切に使用していく。
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