2017 Fiscal Year Research-status Report
教職への意思決定における内的ワーキングモデル理論の構築-社会心理学視点も加えて-
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26380880
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
若松 養亮 滋賀大学, 教育学部, 教授 (50273389)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 教職志望 / 意思決定 / 大学生 / 信頼 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度は学部4年次生に対して量的調査を行った。調査は2018年1月25日から2月14日に行われ、221名の有効回答を得た。 2017年度の研究では、中心的な変数である内的ワーキング・モデル(以下、IWM)について、16年度版よりさらに改訂した尺度を用い、「Ⅰ.自身の力量への信頼」「Ⅱ.同僚教師への信頼」「Ⅲ.教職への不信」「Ⅳ.子どもへの信頼」の4因子を得た。17年度はそれと関連を見る変数として、第1に3つの個人特性(①教職の過酷さの認知、②成長欲求の強さ、③力量の劣性認知)との関連を見た。第2に教育実習やアルバイト等での教育参加体験をふりかえっての所感を尋ねた。これはa.関わりの達成、b.授業での達成、c.モデルとの出会い、d.居心地の良さの4つから成る。これらと教職志望や内的ワーキングモデルとの関連を分析した。 まず個人特性では、教職に強い過酷さを認知した人(①)は、達成経験を経ても教職志望度が低かった。また教職以外で強く希望する選択肢がない人において、成長欲求の強さ(②)は教職志望の強さと正の関連を示した。③は仮説とは逆に、教職を志望する人の方が劣性認知を高くもつ傾向が見られた。次にIWMの4得点を説明変数として、教職志望度の強さを目的変数とした重回帰分析を行うと、「Ⅲ.教職への不信」のみが有意な標準偏回帰係数を示したが、個人特性も説明変数に加えると、その効果は有意でなく、①教職の過酷さの認知と②成長欲求の強さのみが有意になった。ここから、IWMを代替する個人特性の役割に注目する重要性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画された調査は予定通り遂行できたが、以下の点について十分な分析ができていない。①4年間蓄積したデータの複数年度にわたる変数の関連が、本務校の業務に時間をとられて十分にできていないこと、②縦断調査の対象となった学年が、他の学年からみると異質さがいくつか目立つため、その特異性と一般性の切り分けに十分なエビデンスがないこと。③そのため、4年間の計画にあった教職への意思決定のモデル化に着手できていないこと。2018年度への1年間の延長が認められたことから、翌年度はこれを補う1年間としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
前項に述べた未了の計画にしたがって、2018年度には以下の計画で臨みたい。 ①4年間のデータが揃ったので、同じ変数の経年変化や、それに伴う他の変数との関連を分析することで、教職への意思決定のモデル化を行う。 ②今年度の3年生と4年生に調査を行い、対象とした学年の特異性と一般性を切り離す考察を行うとともに、付加的に生じたリサーチ・クエスチョンの解決を試みる。 今年度は最終年度として、内的ワーキング・モデルの有効性と限界を明らかにし、自己・他者・職業への「信頼」の形成過程について、総合的に考察を行いたい。
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Causes of Carryover |
(理由) 研究計画は遂行したが、参加予定であった学会大会に参加できなかったこともあり、使い残したため。 (使用計画) 4年分のデータをまとめて分析するために必要な書籍や論文複写、また関連学会への出張費に使用する。
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Research Products
(3 results)