2014 Fiscal Year Research-status Report
協働学習において調整が社会的に共有されるプロセスの解明
Project/Area Number |
26380881
|
Research Institution | Kyoto University of Education |
Principal Investigator |
伊藤 崇達 京都教育大学, 教育学部, 准教授 (70321148)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 教授・学習 / 協働学習 / 自己調整学習 / 動機づけ / 学習方略 |
Outline of Annual Research Achievements |
「学びあい」を通じて「自ら学ぶ力」と「他者とともに自ら学びあう力」がいかに形成されるか,実証的に解明することが本研究課題であるが,平成26年度は,研究仮説をさらに精錬させ,社会的に共有された調整(socially shared regulation)を測定する尺度の開発を進めた。 研究1では,大学授業においてピア・チュータリングの実践の後,“socially shared cognition”,“socially shared monitoring”,“socially shared effort regulation”のそれぞれを捉える質問項目を作成し,自己効力感,内発的価値,協働学習への動機づけ,自己調整学習方略との関連を分析し,検討した。主たる結果としては,学ぶことに興味や価値を抱いている学習者や,協働学習に対する動機づけの高い学習者は,社会的に共有された調整,すなわち,仲間とともに自ら学びあう活動に積極的に取り組んでいることが実証的に明らかとなった。 研究2では,尺度の構成概念妥当性をさらに検証するために,自己効力感,内発的価値,協働学習への動機づけ,自己調整学習方略に加えて,ピア・モデリング志向性,協同作業認識尺度(長濱他,2009),学業的援助要請尺度を含む調査を実施した。主たる結果として,安易に答えを求めるだけの依存的な援助要請でなく,理解を深めるために適応的な形で援助要請を行う学習者は,仲間とともに自ら学びあう活動に積極的に取り組む傾向にあることなどが明らかとなった。 研究3では,同様にピア・チュータリングの実践を行い,自己効力感,内発的価値,協働学習への動機づけ,自己調整学習方略に加えて,自律的動機づけを含めて質問紙による調査を実施した。知識・理解や学業成績などの成果指標との影響関係についての分析もさらに進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に沿って順調に進めてきている。平成26年度に開発した尺度は,学びあいを実証的に解明していく有効な測定用具となりうるもので,これらの尺度をもとにピア・チュータリングの実践を分析する視点についてさらに検討を進めてきている。また,次年度以降の介入研究につながるように授業実践の当事者として,また,参与観察によって,社会的に共有された調整を質的に捉えていく枠組みについてもさらに検討を進めてきている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度に開発した社会的に共有された調整を測定する尺度をもとに,学びあいの質的な解明を進めていく。介入授業を行い,観察データから協働学習中の発話に焦点をあてて「社会的に共有された調整」や「動機づけ」のトランザクションの分析を試みる。“socially shared cognition”,“socially shared monitoring”,“socially shared effort regulation”の各下位尺度による効果測定も行い,調整が社会的に共有されていくプロセスについて立体的に浮かび上がらせていくようにする。
|
Causes of Carryover |
平成27年度以降,学習過程における学習者の発話や相互作用,学習行動の観察記録を分析するために,VTR,ソフトウェア,記録メディアの物品及び消耗品費,そして,謝金が必要となる。これらのデータが多量なものになることが予想されたため,これにかかる費用として次年度へ一部を繰り越して使用することとした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度以降,尺度による量的データのみならず,質的データを収集し,解析を進めていく。多量の質的,量的データを整理していくにあたっては補助者への謝金が必要となる。また,撮影やデータ解析にあたっても補助者に対して謝金が必要となる。引き続き,研究成果の学会発表や研究打合せを進めていくために旅費として研究費を執行していく予定である。
|
Research Products
(4 results)