2014 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴うポジティブ感情の上昇と認知資源との逆説的関連仮説の検証
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26380882
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
権藤 恭之 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (40250196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増井 幸恵 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10415507)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者 / ポジティブ感情 / ポジティビティー効果 / プライミング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、加齢に伴って低下する認知資源と、認知心理学研究で観察されるポジティビティー効果、そして幸福感の関連をパネルデータ参加者を対象に検証することである。 本年度は、80歳以上をターゲットにした認知実験はほとんど行われていないことから、83歳を中心とした年齢層のパネル調査参加者を対象に実験課題を開発することであった。予定では、感情ストループ課題、感情ワーキングメモリ課題、感情記憶課題を実施することよを予定していたが、ポジティビティー効果がより明確に評価できる課題として、課題に対する自分自身のコントローラビリティーを評価させる課題を追加し、感情ストループ課題と同時に予備実験を行った。また、同時に潜在的意識を評価する方法としてプライミングパラダイムが80歳以上でも有効に機能するのか確認するために、世代性プライミング課題を新たに開発し実施した。約50名の高齢者を対象としてそれぞれの課題を実施したところ、世代性プライミング効果は、若年者高齢者の比較では観察できなかったが、別途実施した世代性の高さを評価する尺度で、世代性が高い高齢者群において、低い群よりも顕著な促進効果が見られた。このことから、80歳以上の高齢者でも潜在意識をプライミングパラダイムで評価できることが確認された。また、感情ストループよりも、コントローラビリティー評価の方が、高齢者群におけるポジティビティー効果が観察できた。両者の課題の違いは、評価をオンラインでする必要があるか否かということにあり、認知的リソースが減少する80歳代では、従来の実験パラダイムで示された、ポジティビティー効果が観察されない可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、感情ストループ課題の様なオンラインでのポジティビティー効果の評価だけでなく、コントローラビリティーを測定する方法を追加し、オフラインでのポジティビティー効果を評価する方法も採用し、その有効性は確認できた。また、世代性の潜在的意識は、プライミングによって個人差が評価できることもわかった。一方、オンライン評価の課題である感情ストループ課題では、高齢者でポジティビティー効果が見られなかった。ただし、本研究では80歳、90歳といった年齢の高い高齢者を対象に反応時間実験を実施するために、課題実行時間を短縮するという方法を取っており、そのために試行数が十分でない可能性がある。現段階ではその検証ができていないという点で、研究の進展には遅れが見られる。しかし、仮説そのものを再検討しより強力な仮説を構築できる可能性が見えてきた。したがって、プロジェクト全体として見た場合は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の予備実験の結果から、ポジティブ感情に関連する処理の過程として、潜在的過程と顕在的過程がオンライン処理およびオフライン処理におけるポジティビティー効果と関連することが示唆された。本年度は感情プライミング課題において、潜在的過程のポジティビティー効果を詳細に検出する方法を開発する予定である。また、世代性プライミングからは、潜在的意識の個人差がプライミング効果として評価可能であることが示唆された。本年度は、集団レベルで検出可能であったこの効果が、個人レベルで評価可能なのかを検証し、パラダイムを応用することで、ポジティブ感情に関連する顕在的過程と潜在的過程を評価できる課題セットを完成する予定である。
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Causes of Carryover |
別件で、出張が入り主任研究者が東京を訪問する機会があったので、分担研究者が大阪に来て研究打ち合わせをする必要がなくなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
額が大きくないため、実験調査実施の経費として使用する。
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Research Products
(2 results)