2015 Fiscal Year Research-status Report
加齢に伴うポジティブ感情の上昇と認知資源との逆説的関連仮説の検証
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26380882
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
権藤 恭之 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (40250196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
増井 幸恵 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (10415507)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者 / ポジティブ感情 / ポジティブ優位性 / ストループ / 記憶 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究の目的は、高齢者を対象とした疫学調査において、実施可能な感情―認知課題を完成させることであった。 本年度は、65歳以上高齢者を約100名を対象として、昨年開発した感情ストループ課題、感情記憶課題、絵画の内容記憶課題、およびコントロ―ラビリティー評価の課題および、全般的な認知機能評価として、MOCA(Montreal Cognitive Assessment)および、ワーキングメモリの評価指標として、リーディングスパンテストを実施した。また、同時にWell-beingの評価を行うためにWHO-5も実施した。その結果、いずれの課題も認知機能の高い群において、ポジティブ優位性が顕著に表れるという先行研究と同様の傾向を示したが、個人レベルで相関分析を実施したところ、認知機能の高さと、ポジティブ優位性効果の間の関連は見出すことが出来なかった。現在同時に測定した、感情状態やパーソナリティーを共変量として両者の関係を再検討している。 また、課題間の特徴から結果を要約すると、感情ストループ課題、感情記憶課題、およびコントロ―ラビリティー評価の課題における、短時間のオンラインでの情報処理において(つまり潜在的な処理)では、認知機能の高い群でポジティブ優位性が顕在化するが、絵画記憶の再生、コントロ―ラビリティー評価課題における、課題遂行後の自分の成績に対する評価(つまり顕在的な処理)においては、認知機能の低い群でポジティブ優位性が顕在化するという傾向が観察できた。これらの結果は、高齢者全般でポジティブ感情に対する動機づけは高まるが、個人の情報処理の効率によって、機能するプロセスが異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
疫学調査において短時間で実施可能な認知課題を開発することができた。一方で短時間で実施するという制限のために結果が明確に得られない可能性も考えられる。結果に関して詳細な分析が終了しておらず、分析を進める必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、76歳を中心とした地域高齢者を対象にした調査において、これまでに開発した課題を実施し、Well-beingを従属変数とし様々な社会的な属性変数を共変量として、認知処理とポジティブ優位性の関連を検証できると考えている。また、今年度の実験から示唆された、個人の情報処理の効率によって、機能するプロセスが異なる可能性についても検証する予定である。
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Causes of Carryover |
調査実施において、一人当たりの実験参加時間が予定より短縮できたため、謝金の執行が予定より少なくて済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度の調査では、予算の許す限り多くの対象者からデータを収集する予定にしており、繰越額の執行は確実である。
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[Journal Article] : 仕事の複雑性と高齢期の記憶および推論能力との関連2015
Author(s)
石岡良子, 権藤恭之, 増井幸恵, 中川威, 田渕恵, 小川まどか, 神出計, 池邉一典, 新井康通, 石崎達郎, 髙橋龍太郎
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Journal Title
心理学研究
Volume: 83
Pages: 219-229
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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