2014 Fiscal Year Research-status Report
大学生の発達における飛躍的移行を支える発達認識の深化と発達教育のあり方
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26380892
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西垣 順子 大阪市立大学, 大学教育研究センター, 准教授 (80345769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田澤 実 法政大学, キャリアデザイン学部, 准教授 (50459963)
中村 隆一 立命館大学, 応用人間科学研究科, 教授 (00469165)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 青年期の発達 / 発達の飛躍的移行 / 発達教育 / トランジッション保障 / 高大接続 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「大学生期における『抽象的総合的思考力に基づく研究力の獲得』に至る発達過程の検討」「大学生のための発達教育のあり方の検討」「研究成果の世界的発信と交流」の3つの目的に沿って実施されている。 それぞれについて本年度は次のような研究活動を行った。「大学生期の発達過程の検討」については、高校生に関する研究動向の全体像を把握するために研究データベース情報のテキストマインニング分析を実施した。また、「学ぶことに関する認識」の発達過程を検討するための予備データの収集を行った他、本研究の基盤理論である「階層ー段階理論」の構築に主要な役割を果たした田中昌人が晩年に「20答法」の実施を試みた理由について検討した。さらに、2年生を対象にしたゼミにおいて、仲間と一緒に学ぶ中で自らの関心事について学問として取り組むプロセスをとりまとめた。 2つめの発達教育については、教養教育の授業について実践研究を行い、授業で取り入れた工夫(発達保障史上重要な映画の視聴、ミニッツペーパー等)の効果検証をした。映画の視聴は一貫して効果があった他、ミニッツペーパーは効果的だが効果の程度は年度によって異なること、読書課題を絞り込むことで効果が高くなる場合があること等が示された。また、発達援助に関わる職にある人やこれから就く人に対する発達教育についても、発達を観るための概念をどう使うかといった観点から検討した。 3つめの研究成果の発信と交流については、Society for Research in Child Developmentのteaching institute分科会で本研究の成果について発表を行うとともに、positive youth developmentと呼ばれる青年期を対象とする研究運動についての情報収集を行った。また、大学評価学会等の国内学会や研究会などでも研究成果の報告をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の1つめの目的である、可逆操作の高次化における階層ー段階理論の立場からの大学生期の発達過程の実証的検討のための、予備データの収集と分析視点を深めるための理論的検討が進んだ。また、自らの関心を学問として取り組むプロセスについても成果のとりまとめが進んだ。 2つめの目的である発達教育のあり方について、教養教育における発達教育の実践と成果の検討を行った。専門教育の観点からも検討した。 3つ目の目的である研究成果の交流については、国際学会に参加して発表を行うとともに、現在の世界的な動向についても情報収集を行うことができた。また大学評価学会を中心に、青年期の発達保障の日本国内での今後の研究のあり方について議論をすることができた。 なお、当初の研究計画では別の学会での発表を予定していたが、Society for Research in Child Developmentへの参加とteaching institute分科会での発表に変更した。こちらの学会のほうが本研究の趣旨と合致することが計画策定後に明らかになったためである。結果的により効果的な研究交流が行えたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
大学生期の発達プロセスの解明については、平成26年度に収集したデータの分析を行う。また、前年度は、2年生を対象にしたゼミにおいて、仲間と一緒に学ぶ中で自らの関心事について学問として取り組むプロセスをまとめてきたが、今年度はそれを学会で発表する予定である。さらに今年度は、大学生の学問観の変化を大学入学前からの経過も含めて明らかにするために、1年生の基礎ゼミにおいて、初年次教育の枠組みを活用しながら研究を進める。 発達教育のあり方については、平成26年度の研究成果を反映した授業実践の改善と効果検証を通じた実践研究をさらに進める予定である。 研究成果の発信と交流については、大学評価学会と発達心理学会を中心に国内で青年期発達保障研究の議論を行っていく他、平成28年に横浜で開催されるInternational Conference of Psychologyで発表するための準備を、平成27年度は進める予定である。 なお、平成26年度にSRCDに参加して明らかになったのだが、positive youth developmentという研究動向が世界的な流れとしてできつつあり、それが本研究と関連が深いと思われる。当初の研究計画には含まれていなかったが、この動きについてレビューをしていく必要がある。そのためには、関連する情報の収集と分析が必要になるため、本研究の当初の計画を変更して研究動向調査の量を増やし、大学生を対象としたデータ収集の規模は多少なりとも縮小することになるかと思われる。
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Causes of Carryover |
残額が生じた主な理由は、データ分析用のパソコンの購入が必要なくなったことによる(女性研究者支援のための補助金が年度後半に支給されたため、パソコンはそちらで購入した)。他方で、教養教育における発達教育に際しては学生の発達理解を支えるための映像資料等がより豊富に必要であることが明らかになってきたことから、今年度は教材についての情報を収集した上で、次年度に教材の購入をすることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発達教育の充実のためには、映像教材の活用が欠かせないと考えられることから、平成27年度における発達教育研究開発の、主に教材研究のための経費として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)