2015 Fiscal Year Research-status Report
ADHD児が抱える空間継時記憶の困難さについての検討
Project/Area Number |
26380897
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Research Institution | Tokyo University of Social Welfare |
Principal Investigator |
成本 忠正 東京福祉大学, 心理学部, 准教授 (60434560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松浦 直己 東京福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (20452518)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ADHD児 / 空間短期記憶 / 記銘 / 保持 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、注意欠如多動性障害(Attention Deficit / Hyperactivity Disorder)を抱える児童生徒の空間短期記憶は、定型発達児よりも弱いことが報告されている。この原因を探るためにNarimoto(研究代表者)とQuinn博士が考案した空間スパン課題を利用した。この課題は、継時呈示される複数の空間位置項目とその順序あるいは軌跡の保持を児童に求めるものである。特にADHD児は注意の継続が困難であるため、試行間に前試行のフィードバックを実験参加者に与えて注意が持続するよう工夫をした。また、記銘情報の呈示後すぐに再生を求める直後再生条件と提示10秒後に再生を求める遅延再生条件を設け、保持成績の低さが記銘あるいは貯蔵の問題であるのか否かを検討した。ADHD児25名と定型発達児25名に実験を行った結果、直後再生条件の両群の成績には相違が認められなかった。しかし、遅延再生条件ではADHD群の成績が著しく低い結果を示した。この結果は、ADHD児の空間位置と軌跡情報の記銘(すなわち、覚える段階)には問題はないのだが、保持(すなわち、貯蔵する段階)の能力に著しい問題が存在している可能性を示している。ADHD児の短期記憶の弱さは注意の散漫による記銘の問題ではないという新たな可能性を示唆している。
本研究の成果をoriginal articleとして国際誌に投稿する予定である。また、平成28年度にハンガリーのブダペストで開催されるInternational conference on Memoryにて本研究の成果を発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ADHD児の実験では、薬の影響を排除する必要があるため、ADHDを抱えるお子さんの保護者様に休薬をお願いしなければならなかった。この説明とスケジュール調整に時間がかかり、実験開始が遅れてしまった。具体的には、休薬をお願いすることから、休日の実験を希望する保護者様が多く、日曜日に実験を実施する必要が生じた。しかし、実施場所である平谷こども発達クリニックは日曜日が休診日であったため、スケジュール調整が困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究のベースとなる実験が終了し、分析も完了している。一方、投薬中と休薬時のADHD児の比較検討の必要性が生じたため、この実験を速やかに実施する。
28年度に予定している実験については、平谷こども発達クリニックのご協力を頂いており、実験環境に問題はありません。
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Causes of Carryover |
実験プログラムの修正を数回繰り返す必要が生じたため、当初予定していた予備実験の実験参加者を大幅に増やす必要があった。また、国際学会にて27年度の研究成果を報告する予定であったが、分析が間に合わず、参加することができなかった。これらの理由により、27年度の助成金支出に相違が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験実施に伴う人件費、実験に参加していただく児童への謝礼金、データ生理・分析に伴う消耗品の購入、ならびに国内外での研究成果報告に必要な旅費と宿泊費に相当の助成金を利用する。
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Research Products
(1 results)